概要

DXの土台になるのは、システムを載せるクラウドと、散らばったデータを一か所に集めて使える状態にするデータ基盤です。この領域では、世界規模でクラウドを提供する大手、データの保管と分析に特化した基盤の企業、国内でクラウドを提供する事業者を扱います。大手クラウドが土台を握る一方、データ基盤の企業は複数のクラウドの上で動くことを強みにしており、競合しながら互いの上に載る関係になっています。生成AIの活用で「使えるデータがあるか」が問われ、データ基盤への投資の優先度が上がっています。

含むもの

  • パブリッククラウド(IaaS・PaaS)
  • データウェアハウス・データ分析の基盤
  • 企業向けデータベースのクラウド提供
  • 国内事業者のクラウド・ハイブリッドクラウド

含まないもの

  • AIの学習・推論に特化した計算資源(AI テーマの AI半導体・計算資源、クラウド・データセンターで扱う)
  • クラウド上の業務アプリケーション(02〜04 で扱う)
  • クラウドのセキュリティ製品(サイバーセキュリティ テーマで扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    パブリッククラウド

    サーバー・ストレージ・データベースなどを、使った分だけの料金で世界規模で提供する。DXのシステムの多くがこの上で動く。

    Amazon.com(AWS)、Microsoft、Alphabet(Google)、オラクル

  2. 02

    データ基盤(データウェアハウス・分析)

    社内外のデータを集めて整え、分析やAIに使える状態にする基盤。複数のクラウドの上で提供する。

    スノーフレイク、データブリックス

  3. 03

    国内・ハイブリッドのクラウド

    国内のデータセンターでのクラウドや、自社運用のシステムとクラウドを組み合わせる環境を提供する。

    IBM、さくらインターネット、インターネットイニシアティブ(IIJ)

データ基盤の企業は、大手クラウドのインフラを借りて事業を行いながら、大手クラウド自身のデータ分析サービスとも競合する。データベースの大手が、他社のクラウドの中で自社のデータベースを提供する動きも広がっている。

コミュニケーションの課題と視点

この領域の競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01情報システム部門・CIO

    どのクラウドも「何でもできる」に見える

    背景

    大手クラウドは数百のサービスを並べ、機能の一覧では差がつきにくくなっている。

    想定される課題

    機能の多さを訴えるほど比較の決め手がなくなり、価格や既存の取引関係で選ばれやすい。自社の業務に合う理由が伝わらない。

    視点

    業界・業務ごとの導入の型と、移行後の運用の負担を具体的に示す。「何ができるか」より「自社と同じ条件の企業がどう使っているか」を伝える。

  2. 02データ活用を担う事業部門・経営企画

    データ基盤の価値が、IT部門の外で伝わらない

    背景

    データ基盤はシステムの裏側にあり、成果は分析やAIの施策として表に出る。

    想定される課題

    投資の判断をする事業部門や経営層には、基盤そのものの価値が見えにくく、「IT部門のインフラ費用」として扱われやすい。

    視点

    基盤の性能ではなく、データがそろったことで実現した意思決定や施策の事例で語る。事業部門の言葉で成果を示す資料をつくる。

  3. 03大手クラウド事業者・データ基盤の企業

    提携相手が、同時に競合でもある

    背景

    データ基盤の企業は大手クラウドのインフラの上で事業を行い、大手クラウドも自前のデータ分析サービスを持つ。

    想定される課題

    提携の発表が「依存」と受け取られたり、競合の発表が提携の不安として伝わったりし、顧客にも投資家にも関係がわかりにくい。

    視点

    どの層で協力し、どの層で競うのかを、構造の図で明確にする。複数のクラウドを選べることを、顧客の選択肢を守る価値として位置づける。

  4. 04公共・金融・医療などの規制業界と社会

    データの置き場所が、信頼の問題になる

    背景

    経済安全保障や個人情報保護の観点から、データを国内に置くこと(データ主権)への関心が高まっている。

    想定される課題

    海外の大手は国内での管理体制を、国内の事業者は規模や機能の差を、それぞれ問われる。説明が不十分だと、選定の候補から外れる。

    視点

    データの保管場所、運用の体制、準拠する基準を、比べられる形で継続的に開示する。国内の事業者は「規模」ではなく「管理と責任の所在」を軸に語る。

競合・提携・出資の関係

  • 競合2件
    • Alphabet(Google)⇄Microsoft

      クラウド[1]

      AWS・Microsoft・Googleの3社がクラウド市場で約6割のシェアを分け合い、生成AIを軸に競っていると報じている。

    • Microsoft⇄Amazon.com(AWS)

      クラウド[2]

      AWSとMicrosoft(Azure)がクラウド市場で首位を争う大手として競合していると報じている。

  • 提携1件
    • オラクル⇄Amazon.com(AWS)

      Oracle Database@AWS[4]

      OracleとAWSが、AWSの中でOracleのデータベースのサービスを使える「Oracle Database@AWS」の一般提供を始めた。

  • 供給・取引1件
    • Amazon.com(AWS)→スノーフレイク

      インフラ提供(5年60億ドル)[3]

      SnowflakeがAWSと複数年の戦略的協業契約を結び、5年間でAWSのインフラに60億ドルを支出する約束をした。

この領域の用語

IaaS・PaaS
IaaSはサーバーなどの設備を、PaaSはアプリを動かす環境を、ネット経由で借りて使うサービス。
データウェアハウス
社内のさまざまなシステムのデータを集め、分析しやすい形で保管する仕組み。
マルチクラウド
複数のクラウド事業者のサービスを組み合わせて使うこと。特定の事業者への依存を下げる狙いがある。
ハイブリッドクラウド
自社で運用するシステムとクラウドを組み合わせて使う形。
データ主権
データがどの国の法律のもとで、誰の管理下に置かれるかを重視する考え方。

出典

  1. AWS・MS・Googleが生成AIでデッドヒート、各社の強みと課題を徹底分析(新しいタブで開きます) 日経クロステック(日経BP)その他(二次情報)公開日 2025.12.02
  2. AWS・MS・Googleが生成AIでデッドヒート、各社の強みと課題を徹底分析(新しいタブで開きます) 日経クロステック(日経BP)その他(二次情報)公開日 2025.12.02
  3. Snowflake Expands AWS Collaboration with $6B Commitment to Accelerate Enterprise Agentic AI Adoption(新しいタブで開きます) Snowflakeプレスリリース公開日 2026.05.27
  4. Oracle Database@AWS Now Generally Available(新しいタブで開きます) Oracleプレスリリース公開日 2025.07.08