概要

完成車は、自動車業界の中心にある市場セグメントです。日本では、大手メーカーが資本提携でグループを形づくり、部品メーカーとも資本や長期の取引で結びついてきました。いま、電動化とソフトウェアで機能を更新する車(SDV)への移行によって、EVを専業とする新興メーカーや、自動運転・ソフトウェアを手がけるIT企業との競争と協業が広がり、車の価値をどこで生み出すかが問い直されています。

含むもの

  • 乗用車・商用車の完成車メーカー
  • EV(電気自動車)の専業メーカー

含まないもの

  • 二輪車・建設機械(ほかの市場セグメントで扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    トヨタと資本提携するメーカー

    トヨタ自動車を中心に、株式を持ち合うなどの資本提携で結びつくメーカー。開発や生産の一部を共同で進める。

    トヨタ自動車、SUBARU、マツダ、スズキ

  2. 02

    独立系の国内メーカー

    トヨタグループとは別に事業を展開する国内の大手メーカー。提携関係の見直しが続いている。

    本田技研工業、日産自動車、三菱自動車工業

  3. 03

    海外の大手メーカー

    複数のブランドを持ち、世界で量産する海外の大手。

    フォルクスワーゲン・グループ

  4. 04

    EVの専業・新興メーカー

    電気自動車を中心に事業を伸ばしてきたメーカー。ソフトウェアや電池の内製を強みとする。

    テスラ、BYD(比亜迪)

国内では、資本提携によるグループが競争の単位になってきました。電動化とソフトウェア化で、新興メーカー・IT企業との協業や、提携の組み替えが同時に進んでいます。

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01生活者(購入を検討する人)

    選択肢が増えるほど、選ぶ基準が見えなくなる

    背景

    EV・ハイブリッド・プラグインハイブリッド・燃料電池車など駆動方式が多様になり、地域や使い方によって適した方式が異なる。

    想定される課題

    方式の違いを並べても、生活者は自分に合うものを判断しにくい。「EVか、そうでないか」という二択の議論に巻き込まれ、企業の考え方が単純化して受け取られやすい。

    視点

    方式の比較ではなく、暮らし方・使い方ごとの選び方を示す。複数の方式を持つ理由を、顧客と地域の多様さから一貫して説明する。

  2. 02投資家

    評価の軸が、ハードウェアからソフトウェアへ移る

    背景

    ソフトウェアで機能を更新するSDVへの移行が進み、新興メーカーやIT企業と同じ物差しで比べられるようになっている。

    想定される課題

    生産規模や品質という強みが、成長性の評価に結びつきにくい。ソフトウェアの進み具合が見えないと、変化に遅れていると受け取られる。

    視点

    ソフトウェアの開発体制や機能更新の実績を、時期と数で示す。量産と品質の強みにソフトウェアを掛け合わせる道筋として語る。

  3. 03採用候補者(ソフトウェア人材)

    「ものづくりの会社」に見えて、選ばれない

    背景

    電動化・自動運転・ソフトウェアの開発で、IT企業と同じ人材を取り合っている。

    想定される課題

    自動車・機械メーカーはハードウェアをつくる会社と見られ、ソフトウェアの仕事の中身や裁量が伝わらない。

    視点

    開発の現場、使っている技術、扱う規模の大きさを具体的に見せる。社会に実装される手触りを、IT企業にはない魅力として打ち出す。

  4. 04いまの顧客・販売店

    変化の中で、いまの車の価値を守る

    背景

    電動化やソフトウェア化の発表が続き、いま乗っている車や販売店の将来に関心が集まっている。

    想定される課題

    新しい技術の発表ばかりが目立つと、いまの車の下取りの価格や、販売店での整備が続くのかという不安が生まれる。

    視点

    いまの車へのソフトウェアの更新や、長期の整備の体制など、いまの顧客を置き去りにしない姿勢を示す。

  5. 05社会

    品質と信頼が、ブランドの土台であり続ける

    背景

    車は安全に直結する製品で、品質や認証の手続きがブランド全体の信頼を左右する。

    想定される課題

    不具合や手続きの問題が起きると、技術の先進性の訴求より先に、信頼が損なわれたと受け取られる。

    視点

    品質管理の仕組みと、問題が起きたときに説明する姿勢を平時から開示し、信頼を取り戻す道筋を示しておく。

競合・提携・出資の関係

  • 競合1件
    • テスラ⇄BYD(比亜迪)

      EVで競合[7]

      日経はBYDが過去5年で20以上の国・地域でテスラの販売台数を上回り、世界のEV市場の勢力図を塗り替えていると報じている。

  • 提携3件
    • トヨタ自動車⇄ウェイモ

      自動運転で提携(基本合意)[4]

      トヨタとWaymoは自動運転技術の開発・普及に向けた協業検討で基本合意し、新たな自動運転車両プラットフォームや個人所有車への技術活用を検討するとした。

    • 本田技研工業⇄日産自動車

      SDV共同開発で提携[5]

      ホンダと日産は次世代SDV向けに中核ECUや車載OS・ミドルウェア等を共通化する共同開発契約を結び、2029年度以降の両社車両への採用を目指すとした。

    • トヨタ自動車⇄BYD(比亜迪)

      EVの研究開発の合弁[8]

      トヨタとBYDは折半出資で合弁会社BYD TOYOTA EV TECHNOLOGYを深圳に設立し、電気自動車とそのプラットフォーム・部品の研究開発を行う。

  • 出資4件
    • トヨタ自動車→SUBARU

      資本提携(約20%)[1]

      トヨタとスバルは新たな業務資本提携に合意し、トヨタは議決権比率を16.83%から20%以上へ引き上げ、スバルはトヨタの持分法適用会社となる見込みとした。

    • トヨタ自動車→マツダ

      資本提携(約5%)[2]

      トヨタとマツダは業務資本提携を結び、トヨタは第三者割当でマツダ株約5.05%を500億円で取得し、マツダもトヨタ株約0.25%を取得するとした。

    • トヨタ自動車→スズキ

      資本提携(約5%)[3]

      トヨタとスズキは資本提携に合意し、トヨタはスズキの自己株式の第三者割当を引き受けて約4.94%(960億円)を取得し、スズキも480億円分のトヨタ株を取得するとした。

    • 日産自動車→三菱自動車工業

      出資(約27%)[6]

      三菱自動車の株主構成で日産自動車が筆頭株主として3億5,759万株、持株比率26.67%を保有している。

この市場セグメントの用語

CASE
Connected(つながる)・Autonomous(自動運転)・Shared & Services(シェアとサービス)・Electric(電動化)の頭文字。自動車業界の変化の方向を表す言葉。
SDV
Software Defined Vehicle。ソフトウェアで機能を追加・更新できる車。
EV・HV・PHEV
電池とモーターで走る電気自動車(EV)、エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッド車(HV)、外部から充電できるプラグインハイブリッド車(PHEV)。
系列
完成車メーカーと部品メーカーが、資本や長期の取引で結びつく関係。

出典

  1. Toyota and Subaru Agree on New Business and Capital Alliance(新しいタブで開きます) SUBARU CORPORATION / Toyota Motor Corporationプレスリリース公開日 2019.09.27
  2. Toyota and Mazda Enter Business and Capital Alliance(新しいタブで開きます) Toyota Canada (Toyota Motor Corporation release)プレスリリース公開日 2017.08.04
  3. Toyota and Suzuki Enter into Capital Alliance Agreement(新しいタブで開きます) Toyota Motor Corporationプレスリリース公開日 2019.08.28
  4. Toyota and Waymo Outline Strategic Partnership to Advance Autonomous Driving Deployment(新しいタブで開きます) Toyota Motor Corporationプレスリリース公開日 2025.04.30
  5. Nissan and Honda Conclude Joint Development Agreement to Standardize ECUs and Software for Next-Generation SDVs(新しいタブで開きます) Honda Motor Co., Ltd.プレスリリース公開日 2026.08.31
  6. 株主構成(投資家情報)(新しいタブで開きます) 三菱自動車工業株式会社公式サイト公開日 2026.03.31
  7. BYD redraws global EV map, overtaking Tesla in 20 markets(新しいタブで開きます) Nikkei Asiaその他(二次情報)公開日 2026.03.03
  8. BYD, Toyota Launch BYD TOYOTA EV TECHNOLOGY Joint Venture to Conduct Battery Electric Vehicle R&D(新しいタブで開きます) Toyota Motor Corporationプレスリリース公開日 2020.04.02