概要

排出量の算定・カーボンクレジットは、GXの成果を「測り」「取引する」ための領域です。この領域では、企業の排出量をデータから算定して開示を支えるクラウドサービスと、削減や吸収の量をクレジットとして売り買いする取引所・取引の場を扱います。取引先の排出(スコープ3)まで求める開示の基準や、国の排出量取引の制度が需要を生み出していることが、この領域の構造の特徴です。いま、国内でも気候関連の開示の基準が定まり、排出量取引の制度が本格的に始まる流れの中で、算定のサービスが乱立する段階から、選ばれる段階に移りつつあります。

含むもの

  • 排出量(サプライチェーン全体を含む)の算定・可視化・開示のクラウドサービス
  • 製品ごとの排出量(カーボンフットプリント)の算定
  • カーボンクレジットの取引所・取引の場

含まないもの

  • 排出を減らす設備や製品そのもの(01〜05の領域で扱う)
  • 一般的な会計・経営コンサルティング

構造と主要企業

  1. 01

    排出量の算定・開示のクラウド

    電気や燃料の使用量、取引先のデータなどから排出量を算定し、開示や削減の計画づくりを支えるクラウドサービスを提供する。

    ゼロボード、アスエネ、booost、パーセフォニ、ウォーターシェッド

  2. 02

    クレジットの取引所・取引の場

    削減や吸収の量を示すカーボンクレジットを、売り手と買い手が取引できる市場や場を運営する。

    日本取引所グループ、アスエネ

算定のサービスは、スタートアップが多く、電力会社や金融機関、商社などと組んで顧客を広げている。クレジットの取引は、国の制度にもとづくクレジットと、民間の基準によるクレジットで、市場が分かれている。

コミュニケーションの課題と視点

この領域の競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01企業のサステナビリティ・経営企画の担当

    どのサービスも同じに見える

    背景

    排出量の算定のクラウドサービスが国内外で増え、機能の一覧では違いが分かりにくくなっている。

    想定される課題

    算定の機能を並べても選ぶ決め手にならず、価格の比較や知名度で選ばれやすい。導入した後に、開示や削減に使えるかどうかの違いが出る。

    視点

    算定した後に何ができるか(開示の基準への対応、取引先からのデータ収集、削減の打ち手)を、業種ごとの事例で示す。第三者の検証にたえる算定であることを伝える。

  2. 02取引先(中小のサプライヤー)

    データを求められる側の負担

    背景

    大企業がスコープ3の算定のために、取引先に排出量のデータの提出を求めるようになっている。

    想定される課題

    取引先にとっては、手間と費用だけが増える依頼として受け取られ、協力が得られないとデータが集まらない。

    視点

    取引先が少ない手間でデータを出せる仕組みと、取引先自身の利益(省エネ、取引の継続)を示す。発注する企業と共同で、取引先向けの説明を行う。

  3. 03生活者・メディア・環境団体

    クレジットが「免罪符」と見られる

    背景

    民間の基準によるクレジットの一部で、削減の効果が過大だったとする指摘が出て、クレジットの質への関心が高まっている。

    想定される課題

    クレジットを使って「排出ゼロ」とうたうと、削減の努力を避けていると批判されるおそれがある。買い手の企業のブランドにも影響する。

    視点

    自社の削減を先に行い、残りをクレジットで補うという順番を明確にする。使うクレジットの種類と、品質の確認の方法を開示する。

  4. 04投資家・金融機関

    排出量の数字が、比べられない

    背景

    開示の基準の整備が進み、投資家や金融機関が投資先・融資先の排出量を集計して開示するようになっている。

    想定される課題

    算定の方法や範囲が企業ごとに違うと、数字を比べられず、開示の信頼性が疑われる。

    視点

    算定の方法、範囲、前提を開示の基準にそって示し、第三者の保証を受ける。年ごとの変化の理由を説明する。

  5. 05採用候補者

    新しい職種が、まだ知られていない

    背景

    排出量の算定や開示の支援、クレジットの取引など、新しい専門の職種が生まれ、人材の需要が増えている。

    想定される課題

    仕事の中身が知られておらず、どんな経験が生きるのか、どんなキャリアにつながるのかが伝わりにくい。

    視点

    会計、IT、エネルギーなど、前職の経験がどう生きるかを、社員の事例で示す。制度が整う中で、専門性が高まる職種であることを伝える。

競合・提携・出資の関係

  • 出資1件
    • 関西電力→ゼロボード

      出資[1]

      ゼロボードのシリーズAの資金調達で、関西電力が出資した事業会社の一つに挙げられている。

この領域の用語

スコープ1・2・3
排出量の範囲の区分。1は自社が直接出す排出、2は買った電気などの排出、3は取引先や製品の使用など、それ以外のサプライチェーン全体の排出。
カーボンクレジット
排出の削減や吸収の量を証書にしたもの。売り買いでき、買った企業は自社の排出の埋め合わせに使える。
J-クレジット
国が認証する国内のカーボンクレジットの制度。省エネや再エネ、森林の管理による削減・吸収量を対象とする。
カーボンフットプリント(CFP)
製品やサービスが、原料の調達から廃棄までに出す温室効果ガスの量。
排出量取引制度(GX-ETS)
企業ごとに排出の枠を設け、枠の過不足を取引する仕組み。国内ではGXリーグでの取り組みから本格的な制度に移行しつつある。
SSBJ基準
日本のサステナビリティ基準委員会が定めた、気候関連などの情報の開示の基準。

出典

  1. Zeroboard, Cloud-based Carbon Accounting Service Provider, Raises 2.44 Bil. Yen (USD18.4 Mil.) in Series A Financing(新しいタブで開きます) Zeroboard(Kyodo News PR Wire)プレスリリース公開日 2023.02.27