概要

電動化・省エネは、GXの「つかう」の側にあたる領域です。この領域では、電気自動車をつくる自動車メーカー、モーターやインバーターなどの電動化の部品メーカー、ヒートポンプで冷暖房や給湯を行う空調メーカー、工場のモーターや設備を効率よく動かす電機メーカーを、化石燃料から電気への置き換えを進める企業として扱います。車、建物、工場と使い道が分かれ、それぞれで排出を減らす方法や費用の回収の期間が違うことが、この領域の構造の特徴です。いま、EVでは中国メーカーの価格競争力が高まり、ハイブリッド車を含めた電動化の方法の選び方が問われる一方、欧州などではヒートポンプの導入が政策で後押しされています。

含むもの

  • 電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車
  • モーター・インバーターなどの電動化の部品
  • ヒートポンプを使う空調・給湯
  • 工場の電化と省エネを進める電機品(インバーター、パワー半導体を使う機器)

含まないもの

  • 自動車メーカーの事業全体(自動車・機械業界の完成車で扱う)
  • 車載用の電池(03 蓄電池で扱う)
  • パワー半導体そのもの(半導体のパワー・アナログ半導体で扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    電動車のメーカー

    電気自動車やハイブリッド車など、電気で走る車を開発・販売する。

    テスラ、BYD(比亜迪)、トヨタ自動車

  2. 02

    電動化の部品

    モーター、インバーター、電動化の駆動ユニットなど、電動車の中核となる部品を開発・供給する。

    デンソー、アイシン

  3. 03

    ヒートポンプ・空調

    空気の熱を集めて冷暖房や給湯に使うヒートポンプで、燃料を燃やす暖房・給湯を置き換える。

    ダイキン工業、三菱電機、パナソニックホールディングス

  4. 04

    産業の電化・省エネ機器

    モーターを効率よく制御するインバーターや、工場の電力を管理する機器で、産業の電化と省エネを進める。

    富士電機、三菱電機

使い道ごとに競う相手が違い、車では自動車メーカーどうし、建物では空調メーカーどうしが競う。電動化の部品やパワー半導体を使う機器は、複数の使い道に共通して使われる。

コミュニケーションの課題と視点

この領域の競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01車の購入を考える個人・法人の車両担当

    EVの不安に、性能の数字では答えられない

    背景

    EVの車種は増えたが、充電の場所や時間、電池の劣化、売るときの価格への不安が購入をためらわせている。

    想定される課題

    航続距離や加速の性能を訴求しても、使い方に合うのか、長く使って損をしないかという不安には答えられない。

    視点

    使い方ごとの充電の方法と費用、電池の保証、下取りの価格の目安を具体的に示す。法人には、走り方のデータにもとづく導入の試算を示す。

  2. 02投資家・メディア

    電動化の戦略が「遅れ」として語られる

    背景

    EV、ハイブリッド車、燃料電池車など、電動化の方法を複数持つ戦略と、EVに集中する戦略が並存している。

    想定される課題

    EVの比率だけで評価されると、複数の方法を持つ戦略は「出遅れ」と受け取られやすい。逆にEVに集中すると、需要の減速時に評価が揺らぐ。

    視点

    地域や用途ごとに、どの方法でどれだけ排出を減らすかを、全体の削減量で示す。方法の選び方の根拠を一貫して説明する。

  3. 03住宅・ビルのオーナー、設備の担当者

    初期の費用の高さが、省エネの価値を隠す

    背景

    ヒートポンプは燃料を燃やす暖房・給湯より運転の費用を抑えやすいが、導入の費用は高くなりやすい。国や自治体の補助制度がある。

    想定される課題

    導入の費用だけで比較され、何年で元が取れるのか、補助をどう使えるのかが伝わらないと、更新の時期に選ばれない。

    視点

    地域の気候や建物ごとの光熱費の削減の試算と、補助制度の使い方をセットで示す。施工会社と組んで、更新の時期に情報を届ける。

  4. 04工場の設備・エネルギーの担当者

    省エネの効果が、経営の言葉になっていない

    背景

    取引先から排出量の削減を求められる工場が増え、設備の電化や省エネへの投資の判断が迫られている。

    想定される課題

    機器の効率の数字は伝わっても、排出量と費用がどれだけ減り、取引の継続にどう効くのかが経営層に伝わらず、投資が後回しにされる。

    視点

    削減できる排出量と光熱費を、工場全体の数字で示す。測る仕組み(04や06の領域)と組み合わせた提案にして、効果を確かめられるようにする。

  5. 05海外の市場の販売店・規制当局

    中国メーカーとの価格の差をどう埋めるか

    背景

    EVでは中国メーカーが電池の内製と量産の規模で価格の競争力を高め、海外市場への輸出と現地での生産を広げている。

    想定される課題

    価格で比べられると不利な企業は、品質や信頼を訴えても、抽象的に受け取られやすい。

    視点

    残価の高さ、保守の網、安全の実績など、使い続ける費用で見た価値を数字で示す。現地での生産や雇用への貢献を伝える。

競合・提携・出資の関係

  • 競合1件
    • テスラ⇄BYD(比亜迪)

      EVで競合[4]

      日経はBYDが過去5年で20以上の国・地域でテスラの販売台数を上回り、世界のEV市場の勢力図を塗り替えていると報じている。

  • 提携3件
    • 富士電機⇄デンソー

      SiCパワー半導体で提携[1]

      富士電機とデンソーがSiCパワー半導体の投資・製造連携を共同申請し、経産省の供給確保計画に認定された(事業総額2,116億円)。

    • トヨタ自動車⇄BYD(比亜迪)

      EVの研究開発の合弁[5]

      トヨタとBYDは折半出資で合弁会社BYD TOYOTA EV TECHNOLOGYを深圳に設立し、電気自動車とそのプラットフォーム・部品の研究開発を行う。

    • アイシン⇄デンソー

      電動駆動モジュールを共同開発[6]

      アイシンとデンソー、両社が出資するBluE Nexusが2モーターハイブリッド駆動モジュールを共同開発し、変速機とモーターをアイシン、インバーターをデンソーの米国拠点で生産する。

  • 出資2件
    • トヨタ自動車→デンソー

      出資(約20%)[2]

      トヨタはデンソー株の一部売却で保有比率を24.2%から約20.0%に下げる計画を公表し、筆頭株主として資本関係を見直した。

    • トヨタ自動車→アイシン

      出資(約22%)[3]

      アイシンの大株主一覧でトヨタ自動車が筆頭株主として約1億6,183万株、議決権比率22.34%を保有している。

この領域の用語

BEV・HEV・PHEV
BEVは電池だけで走る電気自動車、HEVはエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車、PHEVは外から充電もできるハイブリッド車。
ヒートポンプ
少ない電気で、空気などから熱を集めて移す技術。エアコンや給湯器で使われ、燃料を燃やすより効率がよい。
インバーター
電気の周波数や電圧を変えてモーターの回転を細かく制御する機器。省エネの中心の技術。
eアクスル
モーター、インバーター、減速機を一体にした電動車の駆動ユニット。
電化
燃料を燃やして得ていた熱や動力を、電気でまかなうように切り替えること。

出典

  1. 富士電機とデンソーが共同申請した「半導体の供給確保計画」が経済産業省より認定(新しいタブで開きます) 富士電機株式会社・株式会社デンソープレスリリース公開日 2024.11.29
  2. Boosting Growth Investment to Power Mobility Company Transformation Toyota-DENSO Capital Ties Revised(新しいタブで開きます) Toyota Motor Corporationプレスリリース公開日 2023.11.29
  3. 株主・株式の概要(新しいタブで開きます) 株式会社アイシン公式サイト公開日 2026.05.25
  4. BYD redraws global EV map, overtaking Tesla in 20 markets(新しいタブで開きます) Nikkei Asiaその他(二次情報)公開日 2026.03.03
  5. BYD, Toyota Launch BYD TOYOTA EV TECHNOLOGY Joint Venture to Conduct Battery Electric Vehicle R&D(新しいタブで開きます) Toyota Motor Corporationプレスリリース公開日 2020.04.02
  6. Newly Developed "Two-Motor Hybrid Drive Module" Adopted for STELLANTIS New "Jeep Cherokee"(新しいタブで開きます) AISIN World Corp. of Americaプレスリリース公開日 2026.08.27