概要

蓄電池は、つくった電気を時間をずらして使い、車を電気で動かすための領域です。この領域では、EVに積む電池をつくるメーカー、電力網や工場に置く大型の蓄電システムを提供する企業、全固体電池などの次の世代の電池を開発する企業を扱います。車載用の電池は、規模の大きい中国のメーカーが世界の生産の多くを占め、日本・韓国のメーカーと競う構造になっています。いま、EVの需要の伸びの鈍化で工場の計画の見直しが出る一方、再生可能エネルギーの拡大で定置用の蓄電池の需要が伸び、さらに各国が電池の供給網を自国に置くよう求める動きが強まっています。

含むもの

  • EV向けリチウムイオン電池のセル・パック
  • 電力網・工場・家庭向けの定置用蓄電システム
  • 全固体電池などの次世代電池と、その主要な材料

含まないもの

  • 電池を積んだ電動車そのもの(05 電動化・省エネで扱う)
  • スマートフォンなど民生機器向けの小型電池
  • 正極材・負極材などの汎用的な材料メーカー

構造と主要企業

  1. 01

    車載用電池のセルメーカー

    EVに積むリチウムイオン電池のセルを大量に生産し、自動車メーカーに供給する。

    寧徳時代新能源科技(CATL)、BYD(比亜迪)、LGエナジーソリューション、サムスンSDI、パナソニックホールディングス

  2. 02

    定置用の蓄電システム

    電力網や再生可能エネルギーの発電所、工場などに置く大型の蓄電システムを提供する。

    テスラ、寧徳時代新能源科技(CATL)、ジーエス・ユアサ コーポレーション

  3. 03

    次世代電池の開発・材料

    全固体電池など、より多くの電気をため、安全性を高めた次の世代の電池と、その主要な材料を開発する。

    トヨタ自動車、出光興産

電池のセルは、少数の大手メーカーに生産が集まっている。自動車メーカーは、電池メーカーとの合弁や長期の調達契約、自社での開発を組み合わせて、電池を確保している。

コミュニケーションの課題と視点

この領域の競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01自動車メーカーの調達・開発部門

    性能より、確保と供給網の説明が問われる

    背景

    電池の調達先や材料の産地が、各国の補助金の対象や規制に関わるようになり、電池の由来を示す仕組み(電池パスポートなど)の導入も進んでいる。

    想定される課題

    エネルギー密度や価格の比較だけでは選ばれにくくなり、どこで、どんな材料を使ってつくったかを説明できないと、採用の候補から外れるおそれがある。

    視点

    生産の拠点、材料の調達先、製造時の排出量を、顧客の規制への対応に使える形で開示する。長期の供給の約束を、生産の計画とあわせて示す。

  2. 02投資家

    EVの減速と、蓄電池の成長をどう語るか

    背景

    EVの販売の伸びが地域によって鈍り、電池工場の稼働の計画を見直す動きが出ている。一方で定置用の蓄電池の需要は伸びている。

    想定される課題

    EVの需要に業績が強く結びついているほど、減速のニュースが企業の評価に直結する。事業の分散や用途の広がりが伝わらない。

    視点

    車載用と定置用の売上の構成や、顧客の分散を示し、需要の変動への耐性を説明する。工場の計画の変更は、理由と次の見通しをあわせて伝える。

  3. 03工場の立地地域・生活者

    安全への不安が、工場の誘致を左右する

    背景

    電池工場の建設が国内外で進み、大型の蓄電システムの設置も増えている。電池の発火事故は大きく報じられやすい。

    想定される課題

    電池の安全への漠然とした不安が、工場の誘致や蓄電所の設置への反対につながりうる。

    視点

    安全の設計と管理の仕組み、事故の際の対応を、平時から分かりやすく公開する。地域の消防や自治体との連携を伝える。

  4. 04電力会社・再エネ発電事業者

    蓄電池が、もうけを生む設備に見えない

    背景

    再生可能エネルギーの拡大で、電気が余る時間と足りない時間の差が大きくなり、蓄電池で調整する価値が高まっている。

    想定される課題

    蓄電池を「費用のかかる設備」と見ている事業者には、電力の市場での取引や調整力の提供でどう収益を上げるかが伝わっていない。

    視点

    電池の販売にとどまらず、運用の方法と収益のモデルを、導入事例の数字で示す。発電事業者・電力会社と組んだ運用のサービスとして提案する。

  5. 05採用候補者(電池の技術者・材料の研究者)

    限られた専門人材を、各社が取り合う

    背景

    国内外で電池工場の新設と次世代電池の開発が進み、電池の技術者・材料の研究者の需要が高まっている。

    想定される課題

    電池の事業は、親会社の大きなブランドの中に埋もれやすく、どんな技術に携われるのかが伝わりにくい。

    視点

    開発中の技術のテーマや、量産の立ち上げに関われる機会を具体的に示す。研究者が成果を発表できる場を、ブランドづくりに生かす。

競合・提携・出資の関係

  • 競合1件
    • テスラ⇄BYD(比亜迪)

      EVで競合[1]

      日経はBYDが過去5年で20以上の国・地域でテスラの販売台数を上回り、世界のEV市場の勢力図を塗り替えていると報じている。

  • 提携2件
    • 出光興産⇄トヨタ自動車

      全固体電池の量産で協業[2]

      出光とトヨタは、バッテリーEV用の全固体電池の量産に向け、硫化物系の固体電解質の量産技術の開発やサプライチェーンの構築に共同で取り組む。

    • トヨタ自動車⇄BYD(比亜迪)

      EVの研究開発の合弁[3]

      トヨタとBYDは折半出資で合弁会社BYD TOYOTA EV TECHNOLOGYを深圳に設立し、電気自動車とそのプラットフォーム・部品の研究開発を行う。

この領域の用語

セル・モジュール・パック
セルは電池の最小単位。セルを束ねたものがモジュール、さらにまとめて車に積める形にしたものがパック。
リン酸鉄リチウム(LFP)電池
正極にリン酸鉄リチウムを使うリチウムイオン電池。ニッケルなどを使う電池よりエネルギー密度は低いが、安価で長持ちしやすい。
全固体電池
電池の中の液体の電解質を固体に置き換えた電池。安全性を高め、充電を速くできると期待されている。
定置用蓄電池
車ではなく、電力網や工場・家庭など決まった場所に置いて使う蓄電池。
GWh(ギガワット時)
電池の生産能力や容量を表す単位。1GWhは、EVのおよそ1万〜2万台分の電池に相当する。

出典

  1. BYD redraws global EV map, overtaking Tesla in 20 markets(新しいタブで開きます) Nikkei Asiaその他(二次情報)公開日 2026.03.03
  2. 出光とトヨタ、バッテリーEV用全固体電池の量産実現に向けた協業を開始(新しいタブで開きます) トヨタ自動車プレスリリース公開日 2023.10.12
  3. BYD, Toyota Launch BYD TOYOTA EV TECHNOLOGY Joint Venture to Conduct Battery Electric Vehicle R&D(新しいタブで開きます) Toyota Motor Corporationプレスリリース公開日 2020.04.02