概要

鉄道車両・交通システムは、電車や新幹線などの車両と、列車を安全に走らせる信号・列車制御・運行管理のシステムをつくる事業です。顧客は鉄道会社や各国の政府・自治体で、一つの案件ごとに仕様を決め、長い期間をかけて設計・製造・納入し、その後も長く保守を続ける受注型の事業です。

国内では、鉄道会社のグループに属する車両メーカーと、重工・電機メーカーから生まれた車両メーカーが、主な鉄道会社の車両をつくっています。信号の分野では鉄道向けの専業メーカーが、駆動装置や制御装置などの車両用機器では電機メーカーが大きな役割を担います。海外では、買収や合併によって規模を広げた欧州・中国・日本の大手が、車両から信号・保守までをまとめて請け負う形で各国の案件を競っています。

各国で都市の鉄道や高速鉄道の整備が進む一方、国内では人口の減少によって車両の更新の需要が限られ、海外の案件の獲得が成長の鍵となっています。運転士の不足を背景にした自動運転、車両や設備の状態を監視して保守を効率化するデジタルの技術、脱炭素の流れのなかでの鉄道の利用の促進も、事業の新しい柱になりつつあります。

含むもの

  • 新幹線・在来線・地下鉄などの電車と、ディーゼルカー・機関車
  • 新交通システム・路面電車などの都市交通の車両
  • 鉄道の信号保安装置・列車制御・運行管理のシステム
  • 踏切・ホームドア・駅の自動改札などの鉄道向けの機器
  • 鉄道車両の駆動装置・制御装置・ブレーキなどの車両用機器と、車両の保守

含まないもの

  • 鉄道の路線を運行する鉄道会社(運輸・物流の「鉄道」で扱う)
  • 発電・送配電など鉄道以外の社会インフラの機器(電機・精密の「総合電機」で扱う)
  • 工場やプラントの制御機器と計測機器(電機・精密の「計測・制御機器」で扱う)
  • 戦車などの防衛装備(航空・宇宙・防衛で扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    国内の鉄道車両メーカー

    新幹線・在来線・地下鉄などの車両を設計・製造する。鉄道会社のグループに属する会社と、重工メーカーから分社した会社があり、国内の鉄道会社と海外の都市鉄道に車両を納める。

    川崎車両、日本車両製造、総合車両製作所、近畿車輛、新潟トランシス

  2. 02

    車両から信号までを担う大手

    車両に加えて信号・運行管理・保守を一体で請け負い、各国の高速鉄道や都市鉄道の大型案件を競う。買収によって規模と地域を広げてきた。

    アルストム、中国中車、シーメンス、日立製作所、現代ロテム

  3. 03

    信号・運行管理のメーカー

    列車の衝突を防ぐ信号保安装置や列車制御、運行管理のシステム、踏切や駅の機器をつくる。鉄道会社と長く取引し、安全の実績が強みとなる。

    日本信号、京三製作所、大同信号

  4. 04

    車両用機器のメーカー

    モーターなどの駆動装置、電力を制御する装置、ブレーキやドアなど、車両に載せる機器を車両メーカーや鉄道会社に供給する。

    三菱電機、東芝、東洋電機製造、森尾電機、ナブテスコ

鉄道車両・交通システムは、鉄道会社などの発注者のもとで、車両メーカーが車体の設計と組み立てを、電機メーカーや専業メーカーが駆動・制御・信号などの機器を受け持つ分業で成り立つ。海外では車両と信号・保守をまとめて請け負う大手が主導し、国内の車両メーカーは鉄道会社との関係と品質を強みとする。一度納めた車両や設備は長く使われるため、保守と更新の事業が収益の安定に大きく関わる。

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01鉄道会社・各国の政府や交通当局

    安全と長期の保守まで含めて選ばれる

    背景

    鉄道の案件は長期にわたり、車両や設備は納入後も長く使われる。発注者は価格だけでなく、安全性の実績や納期の確実さ、保守の体制を重視している。

    想定される課題

    海外の案件では大手どうしの価格競争が厳しく、品質や安全の実績が十分に伝わらないと、条件の比較だけで評価されやすい。

    視点

    国内外の運行の実績や、故障の少なさ、保守の体制と費用を具体的に示す。現地での生産や人材の育成など、発注国への貢献もあわせて伝える。

  2. 02沿線の住民・利用者

    移動の安全を支える技術を身近に伝える

    背景

    鉄道は日常の移動を支える社会の基盤であり、ホームドアや信号の更新、新しい車両の導入は利用者の安全と快適さに直結する。

    想定される課題

    車両や信号のメーカーは利用者から見えにくく、安全や快適さを支える技術の存在や努力が知られていない。

    視点

    新しい車両の工夫や、ホームの安全対策、信号の仕組みなどを、鉄道会社と協力して分かりやすく発信する。事故や遅延を防ぐ取り組みを利用者の目線で伝える。

  3. 03投資家

    受注の積み上がりを収益力につなげる

    背景

    鉄道の事業は受注から納入まで長い期間がかかり、大型の案件では設計の変更や納期の遅れによる損失の可能性もある。海外の大手は買収で規模を広げている。

    想定される課題

    受注の規模が大きくても、案件ごとの採算や損失の可能性が見えないと、成長の質が評価されにくい。

    視点

    受注残の構成や、保守・信号など採算のよい事業の比重、案件の管理の仕組みを継続して示す。海外での成長の道筋と、その際の危険への備えを説明する。

  4. 04機械・電気の学生と技術者

    社会を動かす大きなものづくりに誘う

    背景

    鉄道車両や信号の開発には、機械・電気・ソフトウェアなど多くの分野の技術者が関わる。自動運転や保守のデジタル化で、ソフトウェアの技術者の需要も高まっている。

    想定される課題

    鉄道の仕事が伝統的で変化の少ない仕事と見られると、デジタルの分野の人材を集めにくい。

    視点

    自動運転や状態の監視など新しい技術の開発や、海外の案件に関わる仕事を具体的に紹介する。完成した車両や設備が長く社会で使われるやりがいを伝える。

競合・提携・出資の関係

出典で裏付けられた関係は、まだ登録されていません。

この市場セグメントの用語

信号保安装置
列車どうしの衝突や脱線を防ぐため、列車の進行や速度を制御する装置の総称。
ATC(自動列車制御装置)
信号の情報に応じて列車の速度を自動で制御し、制限を超えるとブレーキをかける装置。
CBTC
無線で列車の位置を把握し、列車の間隔を制御する方式の列車制御システム。都市の鉄道で導入が進む。
ターンキー
車両・信号・設備などをまとめて請け負い、すぐに運行できる状態で引き渡す契約の形。
ライフサイクルコスト
車両や設備の購入から運用・保守・廃棄までにかかる費用の総額。

出典

  1. 企業情報(新しいタブで開きます) 株式会社総合車両製作所公式サイト
  2. インフラの進化を支える – 日本信号株式会社(新しいタブで開きます) 日本信号株式会社公式サイト
  3. 企業情報(新しいタブで開きます) 株式会社京三製作所公式サイト
  4. A transformational step for Alstom: completion of the acquisition of Bombardier Transportation(新しいタブで開きます) Alstomプレスリリース公開日 2021.01.29
  5. Hitachi Rail acquires Thales’ Ground Transportation Systems for €1,660m(新しいタブで開きます) Hitachiプレスリリース公開日 2024.05.31