概要

航空・宇宙・防衛は、空と宇宙を移動・観測するための機械と、国の防衛に使う装備品をつくる領域です。この領域では、防衛向けの航空機や民間旅客機の部位、航空機のエンジン、ロケットや人工衛星、レーダーや火器などの防衛装備品をつくる事業を扱います。

日本では、重工業や電機の大手が、この領域を事業の一部として手がける形が中心です。防衛向けでは、国が開発と調達を決め、国内の企業が主契約者として機体やエンジンをとりまとめます。民間の旅客機では、日本の企業は自ら完成機を販売するよりも、海外の機体メーカーやエンジンメーカーの国際共同開発に参加し、主翼や胴体、エンジンの部品などを分担して生産する役割を担ってきました。開発から量産、保守までの期間が数十年に及び、品質の保証と認証の取得に多くの時間と費用がかかることも特徴です。

いまは、防衛の装備を強化する国の方針、英国・イタリアとの次期戦闘機の共同開発、旅客の需要の回復による民間機の増産などが、それぞれ事業の追い風になっています。宇宙では、国産ロケットの打ち上げを民間の事業として広げる動きや、月面への輸送を目指すベンチャーの参入も見られます。一方で、国産旅客機の開発は中止となっており、完成機の事業の難しさも示しています。

含むもの

  • 防衛向けの航空機・ヘリコプターと、民間旅客機の機体の部位
  • 航空機のエンジンとその部品
  • ロケットと人工衛星、月面への輸送などの宇宙の事業
  • レーダー・通信などの防衛向けの電子機器
  • 火器・弾薬・推進薬などの防衛装備品

含まないもの

  • 旅客機を運航する航空会社(運輸・物流の「航空」で扱う)
  • 艦艇・商船をつくる造船(造船で扱う)
  • 衛星を使った放送・通信のサービス(メディア・エンタメの「放送・映像配信」、IT・通信の「通信キャリア」で扱う)
  • 航空機の機体などに使われる炭素繊維・金属材料(素材の「繊維」、素材の「非鉄金属」で扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    機体(防衛機・民間旅客機の部位)

    防衛向けの航空機やヘリコプターを主契約者として開発・生産するとともに、海外の機体メーカーの旅客機の主翼・胴体などを分担して生産する。

    三菱重工業、川崎重工業、SUBARU、新明和工業

  2. 02

    航空エンジン

    防衛向けの航空機のエンジンを生産し、民間機のエンジンでは海外のエンジンメーカーとの国際共同開発に参加して、モジュールや部品を供給する。

    IHI

  3. 03

    宇宙(ロケット・人工衛星・月面輸送)

    ロケットの開発と打ち上げの輸送サービス、通信・測位・観測などの人工衛星と地上の設備、月面への輸送などを手がける。

    三菱重工業、三菱電機、NEC、IHI、ispace

  4. 04

    防衛向けの電子機器・火器・弾薬

    レーダーや通信・指揮のシステム、火砲・小銃、弾薬や推進薬などの防衛装備品をつくる。

    三菱電機、NEC、日本製鋼所、豊和工業、日油

防衛向けの航空機では、川崎重工業がP-1哨戒機とC-2輸送機の主契約企業であり、IHIは防衛省が使う航空機のエンジンのほとんどで主契約者を務める。民間機では、国内各社がボーイングの旅客機の開発・生産に参加しており、787では三菱重工業が複合材の主翼、川崎重工業が前部胴体などを、SUBARUが中央翼を担当してきた。三菱重工業は、子会社の三菱航空機が進めてきた旅客機SpaceJetの開発を2023年に中止した。次期戦闘機は日本・英国・イタリアの共同開発(GCAP)であり、日本航空宇宙工業会と三菱重工業が出資する日本航空機産業振興(JAIEC)が、英BAE Systems・伊Leonardoとともに、設計・開発を担う合弁会社Edgewingに3分の1ずつ出資している。三菱電機は、GCAPのセンサー・通信の開発を受託した企業連合に参加している。宇宙では、三菱重工業がH3ロケットの打ち上げ輸送サービスを手がけ、ispaceは月着陸船の打ち上げを同社と契約した。三菱電機とNECは人工衛星を設計・製造している。

そのほかの企業

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01採用候補者・技術者

    長い時間軸の仕事の魅力と、技術を伝える

    背景

    防衛の装備の強化や民間機の増産、宇宙の事業の拡大によって、設計・製造・品質保証の人材の需要が高まっている。一方で、事業の詳細は機密や契約の制約で公開しにくい。

    想定される課題

    仕事の中身が外から見えにくく、他の製造業やIT企業と比べて、働くイメージが伝わりにくい。防衛の仕事に対する心理的なためらいもありうる。

    視点

    公開できる範囲で、製品が社会でどのように使われているか、技術者がどのような課題に取り組んでいるかを具体的に示す。災害派遣や宇宙探査など、仕事の意義が伝わる場面を選んで伝える。

  2. 02国民・地域社会

    防衛の事業に携わる意義と責任を説明する

    背景

    国の方針として防衛の装備の強化が進み、防衛向けの事業の規模が大きくなっている。国際共同開発や装備品の海外への移転も論点になっている。

    想定される課題

    防衛の事業の拡大は、企業の姿勢への疑問や評判への懸念を生むことがある。説明が不足すると、事業の意義が理解されにくい。

    視点

    国の安全保障や災害への対応を支える役割、法令や輸出管理の順守の体制を、事実に基づいて丁寧に説明する。企業としての責任の取り方を一貫した言葉で示す。

  3. 03海外の機体メーカー・国際共同開発の相手

    国際共同開発で選ばれ続けるパートナーになる

    背景

    民間機では、日本の企業は海外の機体・エンジンメーカーの国際共同開発に参加し、部位を分担して生産してきた。次期戦闘機でも英国・イタリアとの共同開発が進んでいる。

    想定される課題

    分担して生産する立場では、技術力があっても最終製品の陰に隠れやすい。増産への対応や品質の安定を示せなければ、次の開発での役割の拡大につながりにくい。

    視点

    複合材の技術や生産の能力、品質の実績を、具体的な部位や数の実績とともに示す。共同開発の相手にとっての信頼できる供給先であることを、継続して伝える。

  4. 04投資家・金融機関

    受注の拡大を、利益の成長として説明する

    背景

    防衛の予算の拡大や民間機の需要の回復により、受注は増える方向にある。一方で、開発の期間が長く、国の契約や機体メーカーの生産計画にも左右される。

    想定される課題

    受注の増加がどの時期に、どれだけの利益として表れるのかが見えにくい。開発の遅れやコストの増加のリスクも評価されにくい。

    視点

    受注の残高、量産の計画、開発の段階ごとの進み具合を継続して示す。防衛・民間・宇宙のそれぞれの収益の特徴とリスクを分けて説明する。

  5. 05衛星の利用者・宇宙ビジネスの事業者

    宇宙を「使える」サービスとして示す

    背景

    ロケットの打ち上げの民間の事業化や、衛星のデータの利用、月面への輸送など、宇宙の事業は国の計画から商業の利用へと広がりつつある。

    想定される課題

    宇宙の技術は専門性が高く、利用者にとって何に使えるのか、費用や時間がどの程度かかるのかがわかりにくい。

    視点

    打ち上げの信頼性や日程、衛星のデータを使った具体的な活用の事例を示す。宇宙を、事業の課題を解決するための手段として伝える。

競合・提携・出資の関係

  • 供給・取引3件
    • 三菱重工業→ボーイング

      部品供給[13]

      三菱重工がボーイング787型機の複合材主翼を製造し、ボーイングへ供給している。

    • 川崎重工業→ボーイング

      部品供給[14]

      川崎重工がボーイング787の前部胴体・主脚格納部・主翼固定後縁を製造し、ボーイングへ供給している。

    • SUBARU→ボーイング

      部品供給[15]

      SUBARUがボーイング787用の中央翼を半田工場で製造し、ボーイングへ供給している。

この市場セグメントの用語

主契約者(プライム)
国などの発注者と直接契約し、機体やシステム全体のとりまとめに責任を持つ企業。
国際共同開発
複数の国の企業が開発費やリスクを分担し、部位ごとに設計・生産を担う開発の方式。民間機や次期戦闘機で使われる。
防衛装備品
自衛隊が使う航空機・艦艇・車両・火器・弾薬・電子機器などの装備の総称。
型式証明
航空機の設計が安全の基準に適合していることを、国の航空当局が証明するもの。取得しなければ旅客機として運航できない。
打ち上げ輸送サービス
顧客の人工衛星などを受託し、ロケットへの搭載から打ち上げまでを請け負うサービス。

出典

  1. 航空機|航空宇宙(新しいタブで開きます) 川崎重工業公式サイト
  2. 航空エンジン(新しいタブで開きます) IHI公式サイト
  3. 大型民間機複合材主翼の製造技術(三菱重工技報 Vol.51 No.4)(新しいタブで開きます) 三菱重工業公式サイト
  4. ボーイング787型機1000号機用の前部胴体が完成(新しいタブで開きます) 川崎重工業プレスリリース公開日 2019.12.16
  5. SUBARUの航空宇宙事業(新しいタブで開きます) SUBARU公式サイト
  6. Notice of Discontinuation of SpaceJet Development Activities(新しいタブで開きます) 三菱重工業プレスリリース公開日 2023.02.07
  7. 日本航空機産業振興株式会社が事業を開始(新しいタブで開きます) 三菱重工業プレスリリース公開日 2024.07.10
  8. Global Combat Air Programme (GCAP) marks major milestone: industry partners launch joint venture company Edgewing(新しいタブで開きます) Leonardoプレスリリース公開日 2025.06.20
  9. GCAP Electronics Evolution receives contract to deliver sensing and communications capability to next-generation fighter aircraft(新しいタブで開きます) Leonardoプレスリリース公開日 2026.09.10
  10. ispace and Mitsubishi Heavy Industries Agree to Launch Mission 3 ULTRA Lunar Lander Aboard H3 Rocket(新しいタブで開きます) 三菱重工業プレスリリース公開日 2026.07.29
  11. 宇宙システム 事業概要(新しいタブで開きます) 三菱電機公式サイト
  12. 宇宙事業紹介(新しいタブで開きます) NEC公式サイト
  13. ボーイング787型機の複合材主翼1000号機目を出荷 自動化による生産性向上をさらに推進へ(新しいタブで開きます) 三菱重工業株式会社プレスリリース公開日 2020.02.10
  14. Kawasaki Completes Mid Forward Fuselage Section for One-thousandth Boeing 787 Aircraft(新しいタブで開きます) 川崎重工業株式会社プレスリリース公開日 2019.12.16
  15. SUBARU 大型航空機中央翼製造累計3,000機を達成(新しいタブで開きます) 株式会社SUBARUプレスリリース公開日 2023.05.26