概要

造船は、海運会社や船主の注文を受けて商船を設計・建造するほか、艦艇や巡視船、船の修繕、エンジンなどの舶用機器までを含む領域です。1隻ごとに受注生産で、船の設計から鋼材の加工、ブロックの組み立て、進水、艤装(ぎそう)まで、大きな設備と多くの技能者を必要とします。

国内には、商船を専門に建造する造船会社と、重工メーカーの船舶事業が並んでいます。ばら積み船やタンカーなどの標準的な船では、中国・韓国の造船会社との価格や建造量の競争が厳しく、LNG運搬船やフェリー、艦艇・潜水艦など、技術の蓄積が求められる船に強みを持つ会社もあります。エンジンなどの舶用機器メーカーや、船の部品をつくる地域の協力会社も、産業を支える重要な担い手です。

いま造船は、経済安全保障の観点からも注目されています。国は2025年に「造船業再生ロードマップ」を策定し、建造能力の引き上げや人材の確保を掲げました。業界では大手どうしの資本関係の強化や事業の譲渡が進み、アンモニアや水素などを燃料にする次世代の船の開発も、競争の焦点になりつつあります。

含むもの

  • ばら積み船・タンカー・コンテナ船などの商船の建造
  • LNG運搬船・フェリー・巡視船などの特殊な船の建造
  • 艦艇・潜水艦の建造と修繕
  • 船舶の修繕・改造
  • 舶用エンジンなどの舶用機器

含まないもの

構造と主要企業

  1. 01

    商船の建造を中心とする造船会社

    ばら積み船やタンカーなどの商船を建造する。グループの造船所で新造船と修繕船を分担し、建造量と船価の動きが収益を左右する。

    名村造船所

  2. 02

    重工メーカーの船舶事業

    LNG運搬船やフェリー、艦艇・潜水艦など、高い技術を要する船を建造する。エネルギー機器や防衛など他事業の技術と組み合わせて手がける。

    三菱重工業、川崎重工業

  3. 03

    舶用エンジンなどの舶用機器

    船の推進用エンジンや燃料供給装置などを造船所に供給し、就航後の保守も担う。燃料の転換に合わせた新しいエンジンの開発が求められる。

    三井E&S

非上場の今治造船は、公正取引委員会の審査を経てジャパン マリンユナイテッド(JMU)の議決権の60%を持ち、JFEホールディングスとIHIが各20%を持つ形になった。三井E&Sは商船の設計を担う三井E&S造船の全株式を常石造船へ譲渡することで2025年4月に合意し、現在は舶用エンジンと港湾クレーンが事業の中心である。三菱重工業は商船事業を完全子会社の三菱造船に集約し、フェリーやRORO船、巡視船などを手がける。川崎重工業はLNG運搬船や潜水艦、液化水素運搬船を手がけ、名村造船所は函館どつくと佐世保重工業をグループに持つ。

そのほかの企業

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01海運会社・船主

    価格と納期に加えて、次の燃料に備えられる船

    背景

    標準的な商船では中国・韓国の造船会社との価格競争が厳しい。一方、環境規制の強化によって、燃料を転換できる船への関心が高まっている。

    想定される課題

    船価と納期だけで比べられると、国内の造船所の強みである燃費性能や品質、就航後の支援が評価されにくい。

    視点

    燃費や保守のしやすさを含めた運航期間全体の価値と、アンモニアや水素などへの燃料転換への備えを、具体的な船の実績とともに示す。

  2. 02技能者・技術者の採用候補者

    ものづくりの現場として選ばれる

    背景

    造船は溶接や艤装などの技能者と、設計の技術者を多く必要とする。国のロードマップでも人材の確保・育成が柱の一つに挙げられている。

    想定される課題

    仕事が「きつい」「将来性が見えにくい」と受け取られると、若い人材が集まりにくい。造船所の多くが地方にあることも、採用の難しさにつながる。

    視点

    自動化や設計のデジタル化で変わる働き方と、次世代の船をつくる仕事の意義を伝える。地域で長く働ける職場であることも、具体的な人の声で示す。

  3. 03投資家・金融機関

    受注の波を越える収益の見通しを示す

    背景

    造船は受注から引き渡しまで数年かかり、鋼材価格や為替の動きが利益に影響しやすい。業界では資本関係の強化や事業の譲渡が進んでいる。

    想定される課題

    受注残が増えても、採算の悪い案件や建造能力の不足があれば、成長の見通しが伝わりにくい。再編の効果も見えにくい。

    視点

    受注残の採算、船種の構成、建造能力の増強計画、再編による設計・調達の効率化などを継続して示す。

  4. 04舶用機器メーカー・協力会社

    建造量の拡大を、サプライチェーン全体で支える

    背景

    船の建造には、エンジンや甲板機械、ブロックの加工など、多くの協力会社が関わる。国は建造能力の引き上げを目標に掲げている。

    想定される課題

    造船所だけが能力を増やしても、協力会社の人手や設備が追いつかなければ建造量は増えない。協力会社にとっては、長く投資する判断の材料が不足しやすい。

    視点

    中長期の建造計画や技術開発の方針を共有し、共同での設計の標準化や自動化の取り組みを示す。協力会社とともに成長する姿勢を伝える。

  5. 05造船所のある地域・社会

    経済安全保障を支える産業としての役割

    背景

    造船は艦艇・巡視船の建造や修繕を担い、海上輸送を支える産業として、経済安全保障の面から注目されている。造船所は地域の雇用の受け皿でもある。

    想定される課題

    造船の役割が一般には見えにくく、地域や社会からの理解や支持が得られにくい。

    視点

    日本の海上輸送や安全を支える役割を、具体的な船や地域の雇用とともに伝える。工場見学や進水式など、地域が関われる機会も生かす。

競合・提携・出資の関係

出典で裏付けられた関係は、まだ登録されていません。

この市場セグメントの用語

総トン(GT)
船の内部の容積をもとに表す船の大きさの単位。重さではない。
艤装(ぎそう)
船体ができた後に、エンジンや配管、電気設備、居住区などを取り付ける工程。
新造船と修繕船
新しく船をつくる事業と、就航中の船の定期的な検査や修理を行う事業。
船主とオペレーター
船を保有する会社と、船を借りて運航し貨物を運ぶ会社。同じ会社が兼ねることもある。
舶用機器
エンジンやプロペラ、甲板機械など、船に搭載する機械や装置の総称。

出典

  1. 2035年に必要な我が国の船舶建造能力確保を目指します~「造船業再生ロードマップ」の策定~(新しいタブで開きます) 国土交通省・内閣府プレスリリース公開日 2025.12.26
  2. 今治造船株式会社によるジャパンマリンユナイテッド株式会社の株式取得に関する審査結果について(新しいタブで開きます) 公正取引委員会プレスリリース公開日 2025.11.18
  3. 会社概要(新しいタブで開きます) ジャパン マリンユナイテッド株式会社公式サイト
  4. 臨時報告書(三井E&S造船株式会社の株式譲渡)(新しいタブで開きます) 株式会社三井E&S有価証券報告書公開日 2025.04.30
  5. 三井E&S 公式サイト(事業紹介)(新しいタブで開きます) 株式会社三井E&S公式サイト
  6. グループ会社(新しいタブで開きます) 株式会社名村造船所公式サイト
  7. 企業情報(新しいタブで開きます) 三菱造船株式会社公式サイト
  8. 船舶海洋(新しいタブで開きます) 川崎重工業株式会社公式サイト