概要

鉄鋼は、自動車・建設・造船・機械などに使う鋼材をつくる市場セグメントです。日本では、鉄鉱石から一貫して鉄をつくる高炉メーカーが自動車用の高級な鋼板などで競争力を持ち、鉄スクラップを使う電炉メーカーや特殊鋼メーカーがそれを補ってきました。いま、国内需要の縮小と中国の過剰生産による市況の悪化に対し、大手は米国やインドなど需要が伸びる地域での買収・投資を進めています。同時に、製造時のCO2排出が多い産業として、電炉への転換や水素を使う製鉄など、生産方法そのものの見直しが求められています。

含むもの

  • 鉄鉱石から鉄をつくる高炉メーカー
  • 鉄スクラップを電気炉で溶かす電炉メーカー
  • 合金を加えた特殊鋼のメーカー

含まないもの

  • 銅・アルミなど鉄以外の金属(非鉄金属で扱う)
  • 鋼材を扱う商社・流通

構造と主要企業

  1. 01

    高炉メーカー

    鉄鉱石と石炭から鉄をつくり、自動車用の鋼板などの高級鋼まで一貫して生産する。

    日本製鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼所、USスチール

  2. 02

    電炉メーカー

    鉄スクラップを電気炉で溶かして鋼材をつくる。高炉より製造時のCO2排出が少ない。

    東京製鐵

  3. 03

    特殊鋼メーカー

    合金を加えて強さや耐熱性を高めた鋼を、自動車部品や工具、電子部品向けにつくる。

    大同特殊鋼

国内の生産は、統合を重ねた高炉メーカーが多くを担ってきた。脱炭素に向けて、高炉から電炉への転換と、海外の需要地での生産の拡大が同時に進んでいる。

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01投資家

    海外での大型投資を、成長として語れるか

    背景

    大手は国内の需要の縮小を受け、米国など海外での買収と大型の設備投資に踏み出している。

    想定される課題

    投資額の大きさや政治的な関心が先に伝わり、回収の道筋や財務への影響に懸念が集まりやすい。

    視点

    地域ごとの需要の見通し、技術の移転による収益の改善の段取り、投資の回収の目安を、時期と指標で示す。

  2. 02自動車・建設などの顧客企業(調達・設計の部門)

    「CO2を減らした鉄」をどう選んでもらうか

    背景

    製造時のCO2を減らした鋼材や、削減量を割り当てた鋼材の販売が始まっている。顧客もサプライチェーンの排出削減を求められている。

    想定される課題

    削減量の計算の方法が会社ごとに異なり、価格の上乗せに見合う価値が顧客に伝わりにくい。

    視点

    削減量の算定の根拠と第三者の検証を示し、顧客の排出量の開示にどう使えるかまで具体的に示す。

  3. 03製鉄所のある地域の住民・自治体

    製鉄所の転換が、地域の雇用の不安になる

    背景

    高炉の休止や電炉への転換で、製鉄所の設備の構成が変わりつつある。製鉄所は地域の雇用と関連産業を長く支えてきた。

    想定される課題

    設備の再編が「撤退」と受け取られ、地域の不安や反発につながりやすい。

    視点

    転換後の拠点の役割、雇用の維持と配置の転換、地域の企業との取引の見通しを、早い段階で地域に説明する。

  4. 04採用候補者(理工系の学生)

    成熟した重厚長大の産業に見える

    背景

    水素を使う製鉄やデータを使った操業など、新しい技術の開発が進み、海外の拠点も増えている。

    想定される課題

    鉄鋼は成熟した産業と見られ、研究・開発や海外の事業で挑戦できる機会が学生に伝わりにくい。

    視点

    脱炭素の製鉄の開発テーマ、海外の拠点で担う仕事、若手に任される範囲を具体的に見せる。

競合・提携・出資の関係

  • グループ1件
    • 日本製鉄→USスチール

      完全子会社(2025年に買収)[1]

      日本製鉄は米国の北米子会社を通じてUSスチールとの合併の取引を完了し、USスチールを完全子会社とした。

この市場セグメントの用語

高炉・電炉
高炉は鉄鉱石を石炭由来のコークスで溶かして鉄を取り出す炉、電炉は鉄スクラップを電気の熱で溶かす炉。
粗鋼
製鋼の工程でできる、加工する前の鋼。鉄鋼の生産量を比べるときの基本の単位になる。
ハイテン(高張力鋼板)
薄くても強い鋼板。車体を軽くしながら衝突の安全性を保つために使われる。
水素還元製鉄
鉄鉱石から酸素を取り除く工程で、石炭の代わりに水素を使う製鉄の方法。CO2の排出を大きく減らせる。
マスバランス方式
工場全体で減らしたCO2の量を、特定の製品に割り当てて「削減した製品」として販売する考え方。

出典

  1. (開示事項の経過)米国 United States Steel Corporation の買収について(新しいタブで開きます) 日本製鉄プレスリリース公開日 2025.06.19