概要
EMSは、他社ブランドの電子機器や基板を受託して製造する事業です。ブランドを持つメーカーは企画や設計、販売に集中し、部品の調達から組み立て、検査、出荷までをEMSに任せます。製品の設計から請け負う形はODMと呼ばれ、パソコンやサーバーで広く使われています。
世界の大手は台湾の企業が中心で、スマートフォンやパソコン、サーバーなどを中国や東南アジア、インド、北米などの巨大な工場で量産しています。欧米のEMSは、通信機器や産業機器、医療機器など品質の要求が厳しく少量で多品種の製品に強みを持ちます。日本では、商社の機能を持つ企業などが車載や産業機器の受託製造を手がけています。
受託製造は利益率が低く、少数の大口の顧客への依存が大きいことが事業の特徴です。近年は生成AI向けのサーバーの製造が大きな成長の分野になり、電気自動車の受託製造に乗り出す企業もあります。地政学の緊張や関税を背景に、中国に集中していた生産を他の国や地域に分散させる動きも進んでいます。
含むもの
- スマートフォン・パソコン・サーバーなどの電子機器の組み立ての受託
- 製品の設計から製造までを受託するODM
- 電子基板への部品の実装と、基板の組み立て
- 車載・産業・医療機器などの電子機器の受託製造
- 部品の調達や物流を含む製造のサプライチェーンの代行
含まないもの
- 自社ブランドで販売するパソコン・スマートフォンのメーカー(パソコン・スマートフォンで扱う)
- 自社ブランドの家電・AV機器(家電・AV機器で扱う)
- 半導体の製造を受託するファウンドリ(半導体デバイス、半導体の「受託製造(ファウンドリー)」で扱う)
- 電子部品そのものの製造(電子部品で扱う)
構造と主要企業
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01
スマートフォン・電子機器を量産する大手
スマートフォンや家電、通信機器などを世界の巨大な工場で量産する。部品やケーブルの製造まで手がけ、大口の顧客の製品を大量に受託する。
鴻海精密工業(フォックスコン)、和碩聯合科技(ペガトロン)、立訊精密工業(ラックスシェア)、新金宝グループ(金宝電子工業)
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02
パソコン・サーバーのODM
ノートパソコンやサーバーを、設計から製造まで受託する台湾の会社。生成AI向けのサーバーの製造が成長を支える。
広達電脳(クアンタ・コンピュータ)、緯創資通(ウィストロン)、英業達(インベンテック)、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)
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03
産業・医療機器に強い欧米のEMS
通信・産業・医療・航空宇宙などの機器を、厳しい品質の要求に合わせて受託製造する。世界に生産拠点を持ち、供給網の管理も請け負う。
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04
日本のEMS
車載機器や産業機器の電子基板と製品を受託製造する。部品の調達や商社の機能と組み合わせ、海外の拠点も活用する。
コミュニケーションの課題と視点
この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。
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01機器メーカーの製造・調達の責任者
製造を任せられる安心と、供給の強さ
背景
機器メーカーは製造をEMSに任せ、企画や販売に集中している。一方で、地政学の緊張や部品の不足で、供給が止まる危険への備えが求められている。
想定される課題
受託製造の会社が費用の安さだけで比べられると、品質の管理や供給の安定、生産の移管への対応力の違いが評価されにくい。
視点
複数の国・地域の生産拠点、部品の調達の力、品質の管理の仕組みを具体的に示し、供給を止めない体制を伝える。
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02投資家
低い利益率からの脱却の道筋を示す
背景
受託製造は利益率が低く、少数の大口の顧客への依存が大きい。生成AI向けのサーバーや電気自動車などの新しい分野が成長の機会になっている。
想定される課題
大口の顧客の製品の動向に業績が左右されるため、成長の持続性や収益の質が見えにくい。
視点
顧客と製品の分野の構成、付加価値の高い設計や部品の内製の比重を継続して示し、成長の分野での受注の見通しを説明する。
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03生産国の地域社会・行政
工場の雇用と働く環境に責任を持つ
背景
EMSの工場は多くの従業員を抱え、生産国の地域の雇用を支えている。一方で、労働の環境や人権への配慮が国際的に厳しく問われている。
想定される課題
過去の労働の問題が繰り返し報じられると、工場の運営の改善が進んでも、厳しい労働の環境の印象が残る。
視点
労働の時間や安全、人権の監査の結果と改善の取り組みを継続して公開し、地域の雇用と人材の育成への貢献を伝える。
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04生産技術者・エンジニア
世界の製造の現場で力を伸ばす
背景
EMSは最先端の電子機器の量産の立ち上げや、自動化された工場の運営に関わる。生産の分散に伴い、各地の工場の立ち上げを担う人材の需要が高まっている。
想定される課題
他社ブランドの製品をつくるため、自社の技術や仕事の内容が外から見えにくく、技術者に魅力が伝わりにくい。
視点
量産の立ち上げや工場の自動化、海外の拠点での経験など、製造の技術を磨ける仕事を具体的に紹介する。
競合・提携・出資の関係
出資1件
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持分法適用会社(34.6%)[3]
豊田自動織機は、ユー・エム・シー・エレクトロニクスの議決権の34.60%を持つ持分法適用関連会社としている。
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この市場セグメントの用語
- EMS
- Electronics Manufacturing Servicesの略。他社ブランドの電子機器の製造を受託する事業。
- ODM
- 他社ブランドの製品を、設計から製造まで受託する方式。
- SMT(表面実装)
- 電子基板の表面に部品を自動の機械で載せてはんだ付けする技術。
- チャイナプラスワン
- 中国に集中していた生産拠点を、他の国や地域にも分散させる考え方。
- AIサーバー
- 生成AIの学習や推論のために、GPUなどの専用の半導体を多く載せたサーバー。