概要

SIer・ITサービスは、企業や行政のシステムを顧客ごとに設計・開発し、運用まで支える市場セグメントです。日本では企業がシステムの開発を外部に任せる比率が高く、メーカー系・ユーザー系・独立系のSIerが大型の案件を元請けとして取りまとめてきました。いま、クラウドへの移行、古いシステムの刷新、生成AIの業務への導入で需要が伸びています。一方で、外資のコンサルティング会社との競争と、IT人材の不足が強まっています。

含むもの

  • システムの受託開発と運用・保守
  • ITコンサルティング
  • IT機器・ソフトウェアの販売と導入

含まないもの

  • 自社製品のソフトウェア・SaaS(ソフトウェア・SaaSで扱う)
  • 経営・業務改革のコンサルティングの詳細(DXテーマで扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    メーカー系

    コンピューターや通信機器のメーカーを母体とし、官公庁や社会インフラの大型案件に強い。

    富士通、NEC、日立製作所

  2. 02

    ユーザー系

    通信・金融・商社などの企業グループの情報システムの部門から生まれ、業界の知識を強みにする。

    NTTデータグループ、野村総合研究所、SCSK、伊藤忠テクノソリューションズ

  3. 03

    独立系

    特定の企業グループに属さず、幅広い顧客と製品を組み合わせてシステムを提供する。

    TISI、BIPROGY、大塚商会

  4. 04

    外資のコンサルティング・ITサービス

    戦略の立案から、システムの導入・運用までを一体で提供する。

    アクセンチュア、IBM

出自によって得意な顧客と業界が分かれる。大型の案件では元請けが協力会社を束ねる多重の構造が残り、人材の確保が成長の上限を決めている。

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01企業の経営者・CIO

    人月の提供から、成果の約束へ

    背景

    システムの開発は、作業した人数と期間(人月)で見積もる契約が多い。顧客の経営者は、ITへの投資の成果を求めるようになっている。

    想定される課題

    人月を提供する会社と見られると、価格で比べられ、提案の価値が伝わりにくい。

    視点

    業務の成果や、システムの刷新による効果を軸に提案する。成果に応じた契約や、自社の資産を使った短期間での導入を示す。

  2. 02採用候補者(新卒・IT人材)

    「多重下請け」の印象を超える

    背景

    IT人材の不足が続き、SIerはコンサルティング会社やWeb企業と人材を取り合っている。

    想定される課題

    長時間の労働や、企画・設計の上流に関われないという印象が残り、志望の動機が生まれにくい。

    視点

    担当する社会インフラの規模、技術の成長の機会、働き方の改善を具体的な数字で示す。若手が上流の工程に関わった事例を見せる。

  3. 03協力会社(ビジネスパートナー)

    人材を確保し続けるための関係をつくる

    背景

    大型の案件の開発は、多くの協力会社の技術者に支えられている。

    想定される課題

    協力会社にとって魅力のある取引先でないと、必要なときに人材が集まらない。

    視点

    長期の取引の見通し、技術の共有、適切な取引の条件を示し、選ばれる元請けになる。

  4. 04投資家

    AIで変わる開発を、成長の物語に変える

    背景

    SIerの業績は大型の案件の受注に支えられ、比較的安定している。生成AIでソフトウェアの開発が効率化され、人月に基づく事業の将来に関心が集まっている。

    想定される課題

    AIで仕事が減るのではないかという見方が、評価の重しになる。

    視点

    AIを使った開発の生産性の向上と、それを収益に変える仕組みを示す。AIの導入を支援する事業の伸びを開示する。

競合・提携・出資の関係

  • 提携1件
    • アクセンチュア⇄Microsoft

      提携(Avanade・専門組織)[2]

      AccentureとMicrosoftが、両社が2000年に設立したAvanade(Accentureが過半を保有)とともに、Microsoftの技術を使った企業の変革を支援する専門組織を立ち上げた。

  • グループ1件
    • NTT→NTTデータグループ

      完全子会社化[1]

      NTTが公開買い付けなどを通じてNTTデータグループを完全子会社にすると発表した。

この市場セグメントの用語

SIer
システムインテグレーター。顧客の情報システムを設計・開発・運用まで請け負う企業。
人月
1人が1か月働く作業量。システム開発の見積もりの単位として使われる。
多重下請け構造
元請けが受けた開発を、複数の階層の協力会社に分けて任せる構造。
2025年の崖
古い基幹システムを放置すると大きな経済損失が生じるという、経済産業省の指摘。システム刷新の需要の背景になった。

出典

  1. NTTがNTTデータグループを完全子会社に、2兆3000億円を投資し公開買い付けを実施(新しいタブで開きます) クラウド Watch(インプレス)その他(二次情報)公開日 2025.05.09
  2. New Accenture Microsoft Business Group Will Empower Enterprises to Thrive in the Era of Digital Disruption(新しいタブで開きます) Accentureプレスリリース公開日 2019.02.04