概要

マーケティングリサーチは、生活者が何を買い、何を考えているかを調べ、企業の商品開発や広告の判断材料にする事業です。かつては調査員による面接や郵送の調査が中心でしたが、ネットのアンケートと、回答者の大きな組織(パネル)を持つ会社が市場の中心になりました。いまは企業が自分で調査を組めるセルフ型のツール、SNSや購買のデータの分析、生成AIを使った分析へと手法が広がり、調査会社とIT企業・コンサルティング会社の境目が薄れています。国内では大手が通信会社の傘下に入ったり、投資ファンドの下で非上場になったりと、データを持つ企業との結びつきを強める再編も進んでいます。

含むもの

  • アンケート調査・インタビューなどの調査の受託
  • 調査に回答するモニターの組織(パネル)の提供
  • 企業が自分で調査できるセルフ型のツール
  • SNSの投稿データの分析(ソーシャルリスニング)
  • 市場の調査レポートの発行

含まないもの

  • 広告の制作・出稿の代理(メディア・エンタメの「広告」で扱う)
  • 経営戦略全般のコンサルティング(コンサルティングで扱う)
  • 視聴率など放送のための専用の測定

構造と主要企業

  1. 01

    総合リサーチ会社

    調査の設計からデータの収集・分析・提言までを請け負う。自社のパネルや購買データを持ち、国内外の調査に対応する。

    インテージホールディングス、マクロミル、クロス・マーケティンググループ、イプソス

  2. 02

    パネル・セルフ型ツール・SNSデータ

    調査の回答者の提供、企業が自分で使う調査・顧客体験の分析ツール、SNSの投稿データの提供と分析を担う。

    GMOリサーチ&AI、クアルトリクス、ホットリンク

  3. 03

    調査レポート・シンクタンク

    業界や市場の動向を調べたレポートを発行し、受託の調査や政策・経営の助言も行う。

    矢野経済研究所、野村総合研究所

調査の価値は、回答者の数と質、そして購買や行動のデータとの組み合わせで決まる。パネルの維持には費用がかかるため、データを持つ通信会社やIT企業との連携、ツール化による効率化が競争の軸になっている。

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01企業のマーケティング・商品開発の担当者

    「自分で調べられる」時代の存在意義

    背景

    セルフ型のアンケートツールや生成AIの分析が普及し、企業が自分で手早く調査できるようになった。

    想定される課題

    調査の受託は「高くて遅い」と見られ、調査会社に頼む理由が説明しにくくなっている。

    視点

    調査の設計の妥当性、回答の質の管理、結果を意思決定につなぐ解釈の力など、ツールでは代えにくい価値を、成果につながった事例で示す。

  2. 02調査に回答するモニター(生活者)

    回答の質を支える信頼と見返り

    背景

    ネット調査はモニターの回答に支えられている。謝礼目当ての雑な回答や、なりすまし・不正な回答への対策が課題になっている。

    想定される課題

    回答の手間に見合う見返りや、データの使われ方が伝わらないと、まじめな回答者が離れ、調査の質が下がる。

    視点

    個人情報の扱いとデータの使い道をわかりやすく示し、回答が社会や商品に生かされた実感を返す。不正な回答の排除の取り組みも、依頼する企業に向けて開示する。

  3. 03通信会社・小売・決済などデータを持つ企業

    データ連携の価値と安全の両立

    背景

    大手の調査会社が通信会社の傘下に入るなど、会員の行動データと調査を組み合わせる動きが進んでいる。

    想定される課題

    データを組み合わせるほど、個人の特定やプライバシーへの懸念が強まり、提携先や生活者の理解を得にくくなる。

    視点

    同意の取り方や統計的に加工する仕組みを示し、連携で何がわかるようになるかを、事業上の成果と安全対策の両面で語る。

  4. 04採用候補者(データ分析・リサーチ職)

    分析の仕事としての魅力を伝える

    背景

    データサイエンティストやリサーチャーは、IT企業・コンサルティング会社・事業会社と取り合いになっている。

    想定される課題

    調査会社の仕事が「アンケートの集計」と見られ、データ分析の職場としての魅力が伝わりにくい。

    視点

    扱うデータの幅や業種の多さ、AIを使った新しい分析の開発に関われることを、具体的な案件の例で示す。

競合・提携・出資の関係

  • グループ1件
    • NTTドコモ→インテージホールディングス

      子会社(51%)[1]

      NTTドコモは公開買付けでインテージホールディングスの株式の51%を取得して子会社にし、会員基盤とインテージのデータ分析の力を組み合わせるとした。

この市場セグメントの用語

パネル
調査会社があらかじめ組織しておく、アンケートに回答してくれる登録者の集まり。
定量調査と定性調査
定量調査は多くの人から数値で傾向をつかむ調査、定性調査はインタビューなどで少人数から理由や本音を深く聞く調査。
セルフ型リサーチ
企業の担当者がツールを使って、調査の作成・配信・集計を自分で行うやり方。
ソーシャルリスニング
SNSなどの投稿を集めて分析し、商品やブランドへの評判や話題を把握する手法。
消費者購買パネル
登録した生活者が買った商品を継続して記録し、誰が何をいつ買ったかを把握する仕組み。

出典

  1. 株式会社インテージホールディングスの普通株式に対する公開買付けの結果について(新しいタブで開きます) NTTドコモプレスリリース公開日 2023.10.17