概要

事務機器・プリンターは、オフィスの複合機や家庭のプリンター、プロジェクターなどの情報機器をつくる事業です。機器を販売・リースしたあとも、トナーやインクなどの消耗品と保守のサービスから継続して収益を得る仕組みが特徴で、全国や世界に広がる販売と保守の網が競争力の土台になっています。

オフィス向けの複合機では、日本に本社を置くメーカーが多く、各社が直販や販売会社を通じて企業に機器と保守を提供しています。家庭向けのプリンターでは、インクジェットの技術を持つメーカーが中心です。紙への印刷の量が減るなかで、開発や生産の共同化、事業の統合などの再編も進んでいます。

働き方の変化や書類の電子化によって印刷の需要は長く減る傾向にあり、各社は機器の販売から、文書の電子化や業務の効率化、ITの導入を支援するサービスへと事業の軸を移しています。一方で、業務用の印刷や看板・布への印刷、店舗のレシートの印刷など、特定の用途の印刷機器には根強い需要があります。

含むもの

  • コピー・印刷・スキャン・ファクスを一台でこなすオフィス向けの複合機
  • 家庭・小規模オフィス向けのインクジェット・レーザープリンター
  • プロジェクター・スキャナーなどの事務用の情報機器
  • 孔版印刷機・大判プリンター・レシートプリンターなどの業務用の印刷機器
  • トナー・インクなどの消耗品と、機器の保守・文書管理のサービス

含まないもの

構造と主要企業

  1. 01

    オフィス向けの複合機メーカー

    企業向けの複合機を開発・販売し、保守と消耗品の供給で継続した収益を得る。文書の電子化やITの導入支援など、オフィス向けのサービスにも事業を広げる。

    リコー、キヤノン、富士フイルムビジネスイノベーション、コニカミノルタ、京セラドキュメントソリューションズ、シャープ、東芝テック、ゼロックス

  2. 02

    開発・生産の共同会社と販売会社

    複数のメーカーが出資して複合機の開発と生産を共同で担う会社や、メーカーの製品を国内で販売・保守する会社。

    エトリア、キヤノンマーケティングジャパン

  3. 03

    家庭・小規模オフィス向けのプリンター

    インクジェットやレーザーのプリンターを家庭や小さな事業所に販売する。インクなどの消耗品と、大容量のインクを使う機種の両方で収益を得る。

    セイコーエプソン、ブラザー工業、HP、キヤノン電子

  4. 04

    業務用・特定の用途の印刷機器

    学校や官公庁の大量の印刷、看板や布への印刷、店舗のレシートの印刷など、特定の用途に向けた印刷機器をつくる。

    理想科学工業、ローランド ディー.ジー.、ミマキエンジニアリング、スター精密、日本プリメックス、OKI

事務機器・プリンターのメーカーは、機器の開発・生産から、販売会社や代理店を通じた販売とリース、保守と消耗品の供給までを一貫して担うことが多い。収益の中心は機器の販売よりも、使われ続けることで生まれる消耗品と保守にある。印刷の需要の減少を受けて、開発・生産の共同化や事業の統合、ITサービスへの事業の転換が進んでいる。

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01企業の総務・情報システムの担当者

    印刷の機械から、業務を軽くする仕組みへ

    背景

    在宅勤務や書類の電子化が進み、オフィスで印刷する量は減っている。企業は複合機の台数や費用を見直し、紙の業務そのものを減らそうとしている。

    想定される課題

    複合機が印刷の費用として見られると、台数の削減や価格の交渉の対象になりやすく、業務の効率化への貢献が伝わらない。

    視点

    紙の書類の電子化や受発注・経理などの業務の効率化の事例を示し、機器とサービスを組み合わせて業務の負担がどれだけ減るかを伝える。

  2. 02家庭の利用者

    必要なときに、手間なく印刷できる安心

    背景

    家庭での印刷は、学校の書類や写真、年賀状など、必要な場面が限られている。インクの費用への不満も根強い。

    想定される課題

    使う頻度が低いため、インクの価格やつまりなどの不満が目立ち、プリンターを持つ価値が見えにくい。

    視点

    大容量のインクや定額の供給、スマートフォンからの印刷など、費用と手間を減らす工夫を具体的に伝える。

  3. 03投資家

    印刷が減るなかでの成長の道筋を示す

    背景

    印刷の需要は長く減る傾向にあり、各社は開発・生産の共同化や事業の統合、ITサービスへの転換を進めている。

    想定される課題

    機器と消耗品の収益が減るなかで、新しい事業がどれだけ育っているかが見えないと、将来の成長が評価されにくい。

    視点

    保守と消耗品の継続した収益、サービスの事業の売上と利益、再編による費用の削減の効果を分けて示し、事業の転換の進み具合を説明する。

  4. 04販売会社・販売代理店

    機器を売る営業から、課題を解く提案へ

    背景

    複合機は販売会社や地域の代理店を通じて中小企業に届くことが多い。顧客の関心は機器から、業務の効率化やITの導入へと移っている。

    想定される課題

    代理店がITや業務の改善の提案に慣れていないと、顧客の新しい要望に応えられず、機器の入れ替えの営業にとどまる。

    視点

    代理店向けの研修や提案の材料、ITの導入を支援する体制を整え、中小企業の業務の改善を共に進める姿を示す。

  5. 05社会・環境に関心のある層

    機器と消耗品を循環させる

    背景

    複合機やプリンター、トナーやインクのカートリッジは多くの資源を使う。使用済みの機器やカートリッジの回収と再利用が求められている。

    想定される課題

    回収や再生の取り組みが知られていないと、紙や消耗品を大量に使う事業として見られるおそれがある。

    視点

    機器の再生と再販売、カートリッジの回収の仕組み、省エネの性能などを具体的に示し、循環の取り組みを伝える。

競合・提携・出資の関係

  • 提携2件
    • リコー⇄東芝テック

      複合機の開発・生産を統合(エトリア)[3]

      リコーと東芝テックは、複合機などの開発・生産の事業を統合し、両社を株主とする合弁会社エトリアを2024年7月に発足させた。

    • コニカミノルタ⇄富士フイルムビジネスイノベーション

      調達の業務提携[5]

      コニカミノルタと富士フイルムビジネスイノベーションは、原材料・部材調達の合弁会社設立を含む複合機分野の業務提携協議に合意した。

  • 出資2件
    • 東芝テック→エトリア

      合弁会社に出資[4]

      東芝テックはリコー・OKIとともに複合機等の開発・生産を担う合弁会社ETRIAに出資し、出資比率は14.25%である。

    • OKI→エトリア

      合弁会社に参画[4]

      OKIは複合機等の開発・生産事業をETRIAに統合する形で参画し、出資比率は5.01%である(効力発生日は2025年10月1日予定)。

  • 供給・取引1件
    • キヤノン→HP

      レーザープリンター用エンジン供給[6]

      キヤノンは、HPにレーザープリンターのエンジンとレーザー用トナーカートリッジを供給している。

  • グループ1件
    • リコー→エトリア

      合弁会社に出資[4]

      リコーは東芝テック・OKIとともに複合機等の開発・生産を担う合弁会社ETRIAに出資し、出資比率は80.74%である。

この市場セグメントの用語

複合機(MFP)
コピー・プリンター・スキャナー・ファクスなどの機能を一台にまとめたオフィス向けの機器。
消耗品のビジネスモデル
機器を販売したあと、トナーやインクなどの消耗品の継続した販売で収益を得る仕組み。
MPS(マネージド・プリント・サービス)
企業の印刷の環境を、機器・消耗品・保守を含めてまとめて管理・最適化するサービス。
インクジェット
細かいインクの粒を紙などに吹き付けて印刷する方式。家庭用から業務用まで広く使われる。
孔版印刷
版に細かい穴をあけてインクを通す印刷の方式。学校などで大量の印刷を安く行うのに使われる。

出典

  1. リコー ソリューション・商品サイト(新しいタブで開きます) 株式会社リコー公式サイト
  2. エプソン ホームページ(新しいタブで開きます) エプソン販売株式会社公式サイト
  3. (開示事項の経過)合弁会社「エトリア株式会社」組成完了に関するお知らせ(新しいタブで開きます) リコー・東芝テックプレスリリース公開日 2024.07.01
  4. 複合機等の開発・生産を担う合弁会社「ETRIA(エトリア)」に新たにOKIが参画(新しいタブで開きます) 株式会社リコープレスリリース公開日 2025.02.13
  5. コニカミノルタと富士フイルムビジネスイノベーション 複合機・プリンター分野での業務提携に向けた協議を開始(新しいタブで開きます) 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社プレスリリース公開日 2024.04.15
  6. Form 10-K for the fiscal year ended October 31, 2025(新しいタブで開きます) HP Inc.有価証券報告書