概要

農業・種苗・飼料は、野菜やきのこ、畜産物などの農産物を生産する事業と、種苗・肥料・農薬・飼料など農業を支える資材をつくる事業からなる市場セグメントです。食品メーカーや外食、小売に原料を届ける食の供給網の最も上流にあり、天候や病気・害虫、穀物の国際的な価格に左右されやすいことが特徴です。

国は食料・農業・農村基本法を改正し、食料安全保障の確保を基本理念に掲げ、国内の農業生産の増大を基本に輸入と備蓄を組み合わせる方針を示しました。農業者の高齢化と減少が進むなかで、企業による大規模な温室での栽培や植物工場、スマート農業の技術の導入によって、生産を安定させる取り組みが広がっています。

種苗会社は品種の開発を強みに国内外の農家へ種子と苗を販売し、飼料会社は輸入した穀物を配合して畜産・養殖の生産者に届けます。肥料や飼料の原料の多くを輸入に頼るため、為替や国際価格の変動が生産者の経営を圧迫しやすく、国内の資源を生かした肥料や、環境への負荷を減らす資材の開発も求められています。

含むもの

  • 野菜・きのこ・発芽野菜などの生産と、温室を使う施設園芸
  • 野菜・花の種子と苗
  • 家畜・養殖魚の配合飼料
  • 肥料・農薬などの農業資材
  • 畜産・養殖の生産と、果物などの農産物の調達・販売

含まないもの

  • トラクター・コンバインなどの農業機械(自動車・機械の「建設・農業機械」で扱う)
  • 小麦粉・食用油・砂糖など、農産物を加工した食品原料(食品原料で扱う)
  • 農薬などを事業の一部に持つ総合化学メーカー(素材の「総合化学・石油化学」で扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    種苗

    野菜や花の品種を開発し、種子と苗を国内外の農家や家庭の園芸に販売する。世界の大手は種子と農薬を組み合わせて提供する。

    サカタのタネ、タキイ種苗、カネコ種苗、ベルグアース、コルテバ・アグリサイエンス

  2. 02

    飼料

    輸入したとうもろこしなどの穀物を配合し、牛・豚・鶏や養殖魚の飼料として生産者に届ける。畜産物の販売まで手がける企業もある。

    フィード・ワン、中部飼料、日清丸紅飼料、日本農産工業

  3. 03

    肥料・農薬

    肥料や農薬を開発・製造し、JAグループや販売店を通じて農家に届ける。世界の大手は研究開発の規模で競う。

    クミアイ化学工業、日本農薬、片倉コープアグリ、シンジェンタ、ヤラ・インターナショナル

  4. 04

    農産物の生産

    きのこや発芽野菜の工場での栽培、大型の温室での施設園芸、サーモンの養殖など、天候に左右されにくい方法で農水産物を生産する。

    ホクト、ユキグニファクトリー、村上農園、サラダボウル、セルマック

農業・種苗・飼料では、生産者に資材を届ける企業と、自ら農産物を生産する企業が並ぶ。種苗と農薬では世界の大手と国内の専業が競い、飼料では穀物を輸入して配合する企業が畜産の生産者と結びつく。生産では、きのこや発芽野菜、施設園芸など、工場や温室で天候に左右されずに育てる企業が存在感を持つ。

そのほかの企業

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01農業者・畜産農家

    生産者の経営を支える提案

    背景

    肥料や飼料の価格の上昇が、農業者の経営を圧迫している。

    想定される課題

    資材の価格の話ばかりになると、商品の価値や支援の内容が伝わりにくい。

    視点

    収量や品質を上げる使い方や、コストを抑える提案を、現場の事例とともに示す。

  2. 02食品メーカー・小売

    安定して届ける産地として選ばれる

    背景

    天候の不順による不作や価格の高騰が、食品の原料の調達を不安定にしている。

    想定される課題

    生産の仕組みや安定性が見えないと、長く取引する相手として選ばれにくい。

    視点

    栽培の方法、生産の拠点、供給の計画を示し、年間を通じて安定した品質と量を届けられることを伝える。

  3. 03社会・行政

    食料安全保障への貢献

    背景

    食料安全保障の確保が、国の農業政策の基本理念に掲げられている。

    想定される課題

    企業の農業への参入や海外の大手の存在が、地域の農業と対立するものと見られることがある。

    視点

    国内の生産の拡大、地域の雇用、環境への負荷を減らす取り組みを具体的に示し、地域の農業とともに歩む姿勢を伝える。

  4. 04研究者・採用候補者

    品種と技術で農業を変える

    背景

    品種の開発やスマート農業の技術など、農業に関わる研究と技術の幅が広がっている。

    想定される課題

    農業の仕事には、体力的に厳しく技術の新しさに乏しいという印象を持たれやすい。

    視点

    品種の開発、データを使った栽培、海外での事業など、技術を生かして働く機会を具体的に伝える。

  5. 05投資家

    天候と市況に左右されにくい収益

    背景

    農産物や農業資材の事業は、天候や穀物の国際価格の影響を受けやすい。

    想定される課題

    業績の変動が大きいと、事業の安定性が評価されにくい。

    視点

    価格への転嫁の仕組み、品種や施設での栽培による安定性、海外での成長を分けて示す。

競合・提携・出資の関係

  • グループ2件
    • 三菱商事→セルマック

      完全子会社[2]

      三菱商事は完全子会社のCermaq Group ASを通じ、2025年12月にGrieg Seafoodのサーモン養殖3事業を取得した(比率100%)。

    • 丸紅→ヘレナ・アグリ・エンタープライズ

      子会社[3]

      丸紅は1987年に米国の農業資材会社ヘレナ・アグリ・エンタープライズを買収し、同社は丸紅の子会社として運営されている。

この市場セグメントの用語

食料安全保障
良質な食料が合理的な価格で安定して供給され、国民一人ひとりが入手できる状態を確保すること。
品種登録
新しく開発した植物の品種を国に登録し、育成した者の権利を守る制度。種苗法にもとづく。
配合飼料
とうもろこしなどの穀物や大豆かすなどを、家畜の種類や成長に合わせて配合した飼料。
施設園芸・植物工場
温室や屋内の施設で、温度や光などを管理して野菜や花を栽培する方法。
スマート農業
ロボットやドローン、データなどの技術を使い、農作業の省力化や生産の安定を図る農業。

出典

  1. 食料・農業・農村基本法(新しいタブで開きます) 農林水産省公式サイト
  2. 有価証券報告書(第107期)(新しいタブで開きます) 三菱商事株式会社有価証券報告書公開日 2026.06.12
  3. Related Sites(新しいタブで開きます) Helena Agri-Enterprises, LLC公式サイト