概要

化学は、石油やガスを原料に、樹脂・合成ゴム・溶剤などの基礎素材から、半導体や電池に使う機能性の材料まで、幅広い化学品をつくる市場セグメントです。日本の大手は、コンビナートで大量に生産する基礎化学品と、少量で利益率の高い機能性化学品を一つの会社の中に併せ持ち、自動車・電機・包装・医療など多くの産業に素材を供給しています。いま、国内需要の縮小と中国などの大規模な増産で、エチレンなどの基礎化学品が供給過剰になり、会社の枠を超えた設備の集約や事業の統合が進んでいます。各社は、基礎化学品の再編と、成長分野への事業の入れ替えを同時に進めています。

含むもの

  • エチレンなどの基礎化学品と合成樹脂(総合化学)
  • 塩化ビニル・シリコーンなど特定の素材に強い化学メーカー
  • 電子材料・機能性樹脂などの機能性化学品

含まないもの

  • 半導体材料の個別の品目(半導体テーマの領域で扱う)
  • 医薬品(医薬・ヘルスケアで扱う)
  • 炭素繊維などの繊維素材(繊維で扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    総合化学

    エチレンなどの基礎化学品から合成樹脂までを、石油化学コンビナートで大量に生産する。機能性化学品も幅広く持つ。

    三菱ケミカルグループ、住友化学、三井化学、旭化成

  2. 02

    素材特化型

    塩化ビニルやシリコーン、ソーダ、ナイロン原料など、特定の素材で大きな規模と原料からの一貫生産を持つ。

    信越化学工業、東ソー、UBE、三菱ガス化学

  3. 03

    機能性化学・電子材料

    半導体・電子部品向けなど、少量で高い性能を求められる化学品に力を入れる。

    レゾナック・ホールディングス、JSR、三菱ガス化学

総合化学の各社は、基礎化学品の設備を他社と集約しながら、機能性化学品の比率を高めている。素材特化型は、特定の品目の規模と原料からの一貫生産で収益を確保している。

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01投資家

    事業の入れ替えの道筋が見えにくい

    背景

    基礎化学品の市況が悪化し、各社は設備の停止・集約や事業の切り出しを進めている。

    想定される課題

    撤退や再編の発表が続くと縮小の印象が先に立ち、どこで成長するのかが伝わりにくい。

    視点

    縮める事業と伸ばす事業を対で示し、利益と資本の配分がどう移るかを、数年単位の計画と実績で開示する。

  2. 02自動車・電機・包装などの顧客企業(開発の担当者)

    素材の会社が「何の会社か」伝わらない

    背景

    一社で数千の製品を持ち、多くの製品は顧客の部品や製品の中に入って見えなくなる。

    想定される課題

    顧客の開発の担当者に、自社の素材がどんな課題を解けるかが伝わらず、価格で比べられやすい。

    視点

    製品の一覧ではなく、軽量化・リサイクル・電動化など、顧客の課題ごとに解決策をまとめて示す。

  3. 03生活者・地域社会

    化学物質とプラスチックへの不安

    背景

    プラスチックごみや化学物質の規制への関心が高まっている。

    想定される課題

    化学の会社が、環境への負荷の原因として一括りにされやすい。

    視点

    リサイクル原料やバイオマス原料への切り替え、化学物質の管理を、具体的な製品と数量で示す。

  4. 04再編の相手となる同業他社と、コンビナートの関係者

    競合と組む再編を、どう説明するか

    背景

    エチレンの設備や合成樹脂の事業で、競合する会社どうしが設備の集約や事業の統合を進めている。

    想定される課題

    競合と組む再編は、従業員・地域・取引先に影響が広がり、主導権の受け止め方も分かれる。

    視点

    再編の目的と、雇用・供給を続ける方針を関係者ごとに説明し、統合後の会社の姿を早く示す。

競合・提携・出資の関係

  • 提携3件
    • 住友化学⇄三井化学

      ポリオレフィン事業を統合[1]

      住友化学は国内のポリプロピレンなどの事業を、三井化学と出光興産の合弁会社プライムポリマーに統合する契約を結んだ。

    • 三井化学⇄出光興産

      合弁で樹脂事業(プライムポリマー)[2]

      三井化学と出光興産は、ポリオレフィン事業を担う合弁会社プライムポリマーを共同で運営している。

    • 三井化学⇄三菱ケミカルグループ

      西日本のエチレン設備を統合へ[3]

      三井化学・三菱ケミカル・旭化成は、西日本のエチレン製造設備の統合に向けて共同事業体を設ける方針で、出資比率を前提に統合の検討を進めている。

この市場セグメントの用語

エチレン・ナフサ
ナフサは原油からとれる化学品の原料、エチレンはナフサを分解してつくる基礎化学品で、多くの樹脂のもとになる。
石油化学コンビナート
原料から基礎化学品、樹脂までをつくる複数の工場が、配管でつながって集まる地域。
ポリオレフィン
ポリエチレンやポリプロピレンなど、包装や自動車部品に広く使われる代表的な樹脂。
機能性化学品
電子材料や特殊な樹脂など、量は少なくても特定の性能で選ばれる化学品。
ケミカルリサイクル
使用済みのプラスチックを化学的に分解し、原料に戻して再び使う方法。

出典

  1. 国内ポリオレフィン事業の競争力強化に向けた最終契約の締結について(新しいタブで開きます) 三井化学・出光興産・住友化学プレスリリース公開日 2025.12.24
  2. 国内ポリオレフィン事業の競争力強化に向けた最終契約の締結について(新しいタブで開きます) 三井化学・出光興産・住友化学プレスリリース公開日 2025.12.24
  3. 旭化成、三井化学、三菱ケミカル 西日本におけるエチレン製造設備の統合に向けた共同事業体の出資比率について(新しいタブで開きます) 旭化成プレスリリース公開日 2026.05.12