概要

印刷は、出版社や企業、自治体などから注文を受け、書籍・雑誌、チラシやカタログ、商品のパッケージなどをつくる事業です。紙に文字や絵を刷るだけでなく、原稿の編集やデザイン、製本・加工、発送までを一貫して引き受けることが多く、顧客の情報を正確に、大量に形にする役割を担ってきました。

業界には、事業を大きく広げた大手と、地域の顧客を支える多数の中小の印刷会社が併存しています。日本印刷産業連合会の資料でも、印刷の事業所の大半は従業者100人未満の規模です。大手は、印刷で培った微細な加工や塗工の技術を生かし、包装材や建装材、ディスプレイ・半導体向けの部材へと事業を広げてきました。また、個人情報を扱う通知物やカードの製造を通じて、事務の代行などのBPOも手がけています。

デジタル化の進展によって、出版物やチラシなどの紙の印刷物の需要は長く減少しています。一方で、パッケージの印刷は堅調で、包装材の環境への配慮も求められるようになっています。各社は、紙の印刷物を中心とした事業から、デジタルの販促や情報処理、生活・産業向けの素材、電子部材などへの転換を進めており、社名から「印刷」を外す会社も見られます。

含むもの

  • 書籍・雑誌・教科書などの出版印刷
  • チラシ・カタログ・ポスターなどの商業印刷と販促の支援
  • 食品・日用品・医薬品などのパッケージ(包装)の印刷
  • ICカードや通知物の作成、事務の代行などの情報加工・BPO
  • 建材の化粧シートなどの建装材
  • 印刷の技術を応用したディスプレイ・電子部品向けの部材

含まないもの

  • 出版社・新聞社による本や記事の企画・発行(出版・ニュースで扱う)
  • 広告の企画・メディアの取引を担う広告会社(広告・マーケティングで扱う)
  • 印刷用紙・板紙の製造(素材の「紙・パルプ」で扱う)
  • 印刷インキなどの化学製品の製造(素材の「化学」で扱う)
  • 半導体製造に使うフォトマスクなどの材料(半導体の「工程材料」で扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    印刷から多くの事業に広げた大手

    出版・商業印刷に加え、包装材・建装材、BPO・情報セキュリティ、ディスプレイや半導体向けの部材など、幅広い事業を持つ。印刷で培った技術と顧客基盤を新しい事業に生かす。

    TOPPANホールディングス、大日本印刷

  2. 02

    出版・商業印刷と包装の中堅

    書籍・雑誌やカタログなどの印刷と販促の支援を中心に、通知物などの情報加工やチューブなどの包装材も手がける。

    共同印刷

  3. 03

    印刷の技術を部材・医療などに広げた会社

    印刷の技術を応用し、タッチパネルなどの電子部材や加飾のフィルム、医療機器などを手がける。印刷物そのものよりも、部材のメーカーとしての性格が強い。

    NISSHA

凸版印刷は2023年10月に持株会社体制へ移行し、社名をTOPPANホールディングスに変更した。2026年4月には、傘下のTOPPAN、TOPPANエッジ、TOPPANデジタルの3社がTOPPANとして合併している。大日本印刷の事業は、スマートコミュニケーション、ライフ&ヘルスケア、エレクトロニクスの3部門で構成される。NISSHAは、印刷の領域を超えて事業が広がったことなどを理由に、2017年に日本写真印刷から社名を変更した。日本印刷産業連合会の資料では、印刷物は出版・商業・証券・事務用・包装・建装などに分類される。

そのほかの企業

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01販促・マーケティングを担う企業の担当者

    「刷る会社」から、成果をつくるパートナーへ

    背景

    チラシやカタログなどの紙の販促物は、デジタル広告への置き換えによって需要が減っている。印刷会社は、デジタルの販促やデータの活用、キャンペーンの運営なども手がけるようになっている。

    想定される課題

    印刷会社が「印刷物を安くつくる会社」と見られていると、企画の段階から相談される機会が少なく、価格の比較だけで選ばれやすい。

    視点

    紙とデジタルを組み合わせた販促の事例と、その成果を具体的に示す。個人情報を安全に扱う体制や、大量の制作物を正確に仕上げる力を、販促の成果につながる強みとして伝える。

  2. 02食品・日用品メーカーの包装の担当者

    環境に配慮した包装を一緒につくる

    背景

    パッケージには、商品を守り、店頭で選ばれるための役割に加え、プラスチックの削減やリサイクルのしやすさといった環境への配慮が求められている。

    想定される課題

    環境に配慮した包装材は、コストや品質、デザインとの両立が難しい。印刷会社の技術力が、メーカーの担当者や生活者に伝わりにくい。

    視点

    素材の置き換えやリサイクルのしやすさを、品質を保った事例とともに示す。メーカーの環境の目標にどう貢献できるかを具体的に伝える。

  3. 03投資家・株主

    事業の転換を成長の物語として示す

    背景

    大手の印刷会社では、紙の印刷物の減少を補うために、電子部材や包装材、BPOなどの事業の比重が高まっている。持株会社体制への移行や事業の再編も行われている。

    想定される課題

    「印刷会社」というイメージのままでは、成長の領域が評価されにくい。事業が多岐にわたるため、どこで稼ぎ、どこに投資するのかが分かりにくい。

    視点

    事業ごとの収益力と投資の方針を明確に示す。印刷で培った技術が、新しい事業でどのように強みになっているのかを一貫した物語として説明する。

  4. 04学生・採用候補者

    「印刷」の先にある仕事を知ってもらう

    背景

    大手・中堅の印刷会社の事業は、電子部材や医療、情報処理、デジタルの販促などに広がっている。理系・文系を問わず、多様な職種がある。

    想定される課題

    社名や業界名から「紙の印刷」の会社と受け取られ、仕事の幅や技術の専門性が知られていない。

    視点

    製品が使われている身近な場面や、技術者・企画職の仕事を具体的に紹介する。印刷の技術から生まれた事業の広がりを、働く人の視点で伝える。

競合・提携・出資の関係

出典で裏付けられた関係は、まだ登録されていません。

この市場セグメントの用語

商業印刷
チラシ・カタログ・ポスターなど、企業の宣伝や販売の促進のための印刷物。
軟包装
フィルムなどの柔らかい素材でつくる袋状の包装。食品の袋や詰め替えパウチなど。
建装材
床や壁、家具などの表面に使う、木目などを印刷した化粧シートなどの材料。
BPO
企業や自治体の事務などの業務を、外部の会社がまとめて引き受けること。印刷会社では通知物の作成・発送と組み合わせることが多い。
オンデマンド印刷
版をつくらずにデジタルのデータから直接印刷する方式。少ない部数や、一人ひとり内容を変える印刷に向く。

出典

  1. 印刷産業Annually Report 2026年度版(新しいタブで開きます) 日本印刷産業連合会公的統計公開日 2026.04.20
  2. 『凸版印刷は、TOPPANへ。』社名変更をテーマとした新広告を開始(新しいタブで開きます) TOPPANホールディングスプレスリリース公開日 2023.10.02
  3. グループ再編の変遷(新しいタブで開きます) TOPPANホールディングス公式サイト
  4. 事業領域(新しいタブで開きます) 大日本印刷公式サイト
  5. 事業紹介(新しいタブで開きます) 共同印刷公式サイト
  6. 日本写真印刷株式会社からNISSHA株式会社へ―商号の変更に関するお知らせ―(新しいタブで開きます) NISSHAプレスリリース公開日 2017.05.12