概要

タイヤは、自動車や二輪車、航空機、鉱山・建設車両などが路面に接する部分であり、走る・曲がる・止まるの性能や燃費、乗り心地を左右します。この領域では、乗用車用からトラック・バス用、鉱山や農業で使う大型のタイヤまで、タイヤをつくり、販売し、保守する事業を扱います。

タイヤの販売先は、大きく分けて新車に装着するために自動車メーカーへ納める「新車用」と、交換需要に応える「市販用」、そして「輸出用」があります。新車用では自動車メーカーとの共同開発や長期の取引が重視される一方、市販用ではタイヤ専門店やカー用品店などの販売網と、生活者に選ばれるブランドの力が重要になります。天然ゴムなどの原材料を海外から調達し、世界各地で生産する、グローバルな事業構造であることも特徴です。

いまは、車の電動化や大型化に合わせて、重さや静かさ、摩耗への対応など、タイヤに求められる性能が変わりつつあります。国内各社は、ブランドの集約やプレミアム商品への注力、鉱山・建設・農業向けのタイヤ事業の買収などによって、収益性の高い領域を強めようとしています。リトレッドや摩耗の管理といった、タイヤを売った後のサービスを広げる動きもあります。

含むもの

  • 乗用車・ライトトラック用のタイヤ
  • トラック・バス用のタイヤ
  • 鉱山・建設車両や農業機械用のタイヤ(オフハイウェイタイヤ)
  • 二輪車・航空機用のタイヤ
  • 使用済みタイヤの表面を張り替えるリトレッドと、タイヤの保守サービス

含まないもの

  • ホイール・ブレーキなど、タイヤ以外の自動車部品(自動車部品で扱う)
  • 合成ゴム・カーボンブラックなどのタイヤの原材料(素材の「化学」で扱う)
  • タイヤを販売・交換するカー用品店(専門店の「ホームセンター・家具」で扱う)
  • 完成車をつくる自動車メーカー(完成車で扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    乗用車・トラック用タイヤのメーカー

    乗用車・ライトトラック・トラック・バス用のタイヤを開発・生産し、新車用として自動車メーカーに納めるとともに、市販用として販売網を通じて生活者や運送会社に届ける。

    ブリヂストン、住友ゴム工業、横浜ゴム、TOYO TIRE

  2. 02

    鉱山・建設・農業向けのオフハイウェイタイヤ

    鉱山の大型ダンプや建設機械、農業機械などが使う大型・特殊なタイヤをつくる。使われる現場の条件が厳しく、耐久性と専門的な保守サービスが求められる。

    ブリヂストン、横浜ゴム

  3. 03

    リトレッド・タイヤの保守サービス

    摩耗したタイヤの表面のゴムを張り替えて再び使えるようにするリトレッドや、運送会社などのタイヤを点検・管理するサービスを提供する。

    ブリヂストン

タイヤの流通は、自動車メーカーに納める新車用、ディーラーやタイヤ取扱店などを通じて販売する市販用、輸出用に分かれ、国内の販売本数では市販用が最も大きい。住友ゴム工業は2025年に米Goodyearから欧州・北米・オセアニアの四輪タイヤの「DUNLOP」の商標権などを取得し、DUNLOPをグローバルのプレミアムブランドとして展開する方針を示している。横浜ゴムは2025年にGoodyearの鉱山・建設車両用タイヤ事業の買収を完了した。ブリヂストンは2007年にリトレッドの米バンダグ社を買収している。

そのほかの企業

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01自動車のユーザー

    見た目では違いのわからないタイヤを、選ぶ理由をつくる

    背景

    市販用タイヤは、タイヤ専門店やカー用品店、ディーラーなどで交換時に選ばれる。各社はブランドの集約やプレミアム商品への注力を進めている。

    想定される課題

    タイヤは見た目で性能の違いがわかりにくく、交換の時期にだけ意識される商品である。価格や店頭のすすめで選ばれやすく、ブランドの価値や技術の違いが伝わりにくい。

    視点

    雨の日の止まりやすさ、静かさ、長持ちなど、運転する人が体感できる言葉で性能を示す。交換の時期や点検の大切さとあわせて、日ごろの安全に役立つ情報を届ける。

  2. 02自動車メーカー

    電動車の時代に、新車に選ばれる開発力を示す

    背景

    新車用タイヤは自動車メーカーと共同で開発され、車の性能の一部として評価される。電動車では車重の増加や静かさへの要求など、タイヤに求められる条件が変わっている。

    想定される課題

    新車用は価格の交渉が厳しく、車種ごとの開発負担も大きい。技術の提案力が伝わらなければ、単なる部品の供給先とみなされやすい。

    視点

    電費や静粛性、摩耗への対応など、車づくりの課題に対してタイヤが果たす役割を、開発の事例とともに示す。新車への装着を市販用のブランドの信頼にもつなげる。

  3. 03運送会社・鉱山の事業者

    タイヤを「消耗品」から「稼働を支えるサービス」へ

    背景

    トラック・バスや鉱山・建設車両では、タイヤの寿命や故障が車両の稼働とコストに直結する。リトレッドやタイヤの管理サービスを提供する動きが広がっている。

    想定される課題

    タイヤを買うたびの価格で比べられると、耐久性や保守サービスの価値が評価されにくい。サービスの効果が数字で示されなければ、導入の判断につながりにくい。

    視点

    タイヤの寿命、燃費、故障による停止の減少など、事業者のコストや稼働に結びつく効果を具体的に示す。製品とサービスを組み合わせた提案として伝える。

  4. 04投資家・金融機関

    買収とブランドの再編を、収益の力につなげる

    背景

    国内のタイヤ各社は、海外の商標権の取得や事業の買収によって、プレミアム商品や鉱山・建設向けなどの領域を強めている。原材料の価格や為替の影響も大きい。

    想定される課題

    買収や商標の取得は大きな投資を伴う。統合の進み具合や収益への効果が見えなければ、投資の妥当性が理解されにくい。

    視点

    高付加価値の商品の比率、地域ごとの販売の伸び、買収した事業の統合の進み具合などを継続して示す。原材料や為替の変動への備えもあわせて説明する。

  5. 05地域社会・環境に関心のある人

    タイヤの環境への影響に向き合う

    背景

    タイヤは天然ゴムなどの原材料を使い、使用済みタイヤの処理や走行中の摩耗も環境の論点になる。リトレッドや原材料の見直しなどの取り組みが進んでいる。

    想定される課題

    環境への取り組みが抽象的な目標だけで語られると、実際の効果が伝わらない。天然ゴムの産地での人権や環境への配慮も問われる。

    視点

    リトレッドによる資源の節約、再生材やバイオマス由来の材料の活用、原材料の調達の方針などを、具体的な取り組みとして示す。

競合・提携・出資の関係

出典で裏付けられた関係は、まだ登録されていません。

この市場セグメントの用語

新車用・市販用
新車に装着するために自動車メーカーに納めるタイヤが新車用、交換のために販売店などで売られるタイヤが市販用。
リトレッド
摩耗したタイヤの表面のゴムを張り替えて、再び使えるようにすること。主にトラック・バス用で使われる。
オフハイウェイタイヤ(OHT)
鉱山・建設車両や農業機械など、一般の道路以外で使う車両向けのタイヤ。
スタッドレスタイヤ
滑り止めの金属のピンを使わずに、雪道や凍った道で走れるようにした冬用タイヤ。
低燃費タイヤ
転がるときの抵抗を小さくし、燃費や電費を良くするタイヤ。

出典

  1. タイヤの流通経路|日本のタイヤ産業(新しいタブで開きます) 一般社団法人 日本自動車タイヤ協会(JATMA)公的統計
  2. 欧州・北米・オセアニア地域での四輪タイヤDUNLOP商標権等を米Goodyear社より取得(新しいタブで開きます) 住友ゴム工業プレスリリース公開日 2025.01.08
  3. 横浜ゴム、グッドイヤー社の鉱山・建設用車両向けタイヤ事業の買収を完了(新しいタブで開きます) 横浜ゴムプレスリリース公開日 2025.02.04
  4. バンダグ社の紹介(新しいタブで開きます) ブリヂストン公式サイト