概要

機能性化学・電子材料は、塗料・接着剤・電子材料・電池材料など、特定の機能で選ばれる化学品をつくる市場セグメントです。エチレンのような基礎化学品を大量に安くつくる事業と異なり、つくる量は少なくても、顧客の製品の性能や品質、生産の効率を大きく左右します。顧客の開発の段階から一緒に素材を作り込むことが多く、一度採用されると長く使われやすい特徴があります。

日本の化学メーカーは、半導体・ディスプレー・電子部品に使う材料や、自動車・建物向けの塗料などで、世界の大きな顧客に素材を供給しています。総合化学の会社でも、石油化学の事業を切り離し、電子材料などに経営の資源を集める動きが進んでいます。たとえばレゾナックは、石油化学の事業をクラサスケミカルとして切り離しました。

一方で、電子材料や電池材料は、半導体や電気自動車の需要の波の影響を強く受けます。電池材料では、中国や韓国のメーカーが大きな規模で生産しており、価格の競争も厳しくなっています。各社は、顧客の次の世代の製品に採用される技術を開発し続けることと、化学物質の規制や環境への配慮に応えることの両立を求められています。

含むもの

  • 塗料・インキ・接着剤・粘着テープ
  • 半導体・ディスプレー・電子部品向けの電子材料
  • リチウムイオン電池の正極材・負極材・電解液などの電池材料
  • 樹脂やゴムに加える添加剤、界面活性剤、香料、炭素材料などの機能性化学品

含まないもの

  • エチレンなどの基礎化学品と汎用の合成樹脂(総合化学・石油化学で扱う)
  • フォトレジスト・研磨剤など半導体の製造工程の材料の個別の品目(半導体の「工程材料」、半導体の「後工程・実装材料」で扱う)
  • 炭素繊維・電池のセパレーターなどの繊維・膜の素材(繊維で扱う)
  • 銅箔・正極材の原料となる金属の製錬(非鉄金属で扱う)
  • 化粧品・洗剤などの消費財(化粧品・日用品で扱う)

構造と主要企業

  1. 01

    塗料・インキ

    自動車・建物・船舶・包装などに使う塗料やインキを、用途ごとに開発・製造する。世界の各地域で、現地の会社の買収によって事業を広げる会社もある。

    日本ペイントホールディングス、関西ペイント、大日本塗料、中国塗料、エスケー化研、artience、DIC

  2. 02

    電子材料

    半導体・ディスプレー・電子部品の製造に使う樹脂・絶縁材料・感光材料などを、顧客の開発に合わせて供給する。

    レゾナック・ホールディングス、JSR、日産化学、東京応化工業、住友ベークライト、太陽ホールディングス、ADEKA、有沢製作所

  3. 03

    電池材料

    リチウムイオン電池の正極材・負極材・電解液などをつくり、電池メーカーに供給する。中国・韓国の大手と日本・欧州のメーカーが競う。

    ユミコア、エコプロ、L&F、戸田工業、日本化学工業、MUアイオニックソリューションズ、広州天賜高新材料

  4. 04

    粘着・樹脂・添加剤などの機能性化学品

    粘着テープや光学フィルム、特殊な樹脂、界面活性剤、炭素材料など、特定の性能で選ばれる化学品を幅広くつくる。

    日東電工、クレハ、デンカ、三洋化成工業、日油、東海カーボン、デュポン、シンエンスコ(旧ソルベイの先端素材部門)

機能性化学・電子材料の会社は、特定の用途や顧客の業界に強みを絞り、少ない量の製品を高い付加価値で売る。顧客の製品の開発に合わせて素材を作り込むため、技術の担当者どうしの関係と品質の安定が競争力となる。総合化学の会社の多くもこの分野に力を入れており、事業の切り出しや買収による再編が続いている。

そのほかの企業

コミュニケーションの課題と視点

この市場セグメントの競争の構造から、コミュニケーションで想定される課題と、考えるための視点を整理したものです。いずれも Relens の分析・仮説です。

  1. 01電機・自動車などの顧客企業の開発の担当者

    次の世代の製品の課題を一緒に解く相手として選ばれる

    背景

    電子材料や電池材料は、顧客の製品の開発の初期から採用が決まることが多い。

    想定される課題

    製品の一覧と物性の値を示すだけでは、競合の材料との違いや、開発の相談の相手としての価値が伝わらない。

    視点

    顧客の課題ごとに、材料の組み合わせと評価の体制、共同で開発した事例を示し、早い段階から相談される存在になる。

  2. 02投資家

    需要の波を越えて伸びる道筋を示す

    背景

    半導体や電気自動車の需要の変動によって、電子材料・電池材料の業績は大きく上下する。

    想定される課題

    短い期間の業績の上下ばかりが注目されると、中長期の成長の力が評価されにくい。

    視点

    顧客の製品の世代ごとの採用の見通しと、研究開発・設備への投資の考え方を、事業ごとに分けて説明する。

  3. 03研究職・技術職の採用候補者

    見えない素材の仕事の面白さを伝える

    背景

    機能性化学品は顧客の製品の中に入り、一般の人の目に触れることが少ない。

    想定される課題

    会社の名前や事業の中身が知られず、研究職・技術職の採用で知名度の高い会社に負けやすい。

    視点

    スマートフォンや自動車など身近な製品の中で自社の素材が果たす役割を、開発に携わった社員の言葉とともに伝える。

  4. 04生活者・規制当局

    化学物質の管理と環境への配慮を示す

    背景

    有機フッ素化合物などの化学物質への規制や、塗料・接着剤に含まれる溶剤への関心が高まっている。

    想定される課題

    対応の内容が見えないと、化学の会社全体が環境や健康への負担の原因と見られやすい。

    視点

    対象となる物質の代替の計画と進み具合、環境への負荷の少ない製品への切り替えを、具体的な製品とともに開示する。

競合・提携・出資の関係

この市場セグメントの用語

機能性化学品
電子材料や特殊な樹脂など、量は少なくても特定の性能で選ばれる化学品。
スペシャリティケミカル
機能性化学品の英語の呼び方。汎用の基礎化学品(コモディティ)と対比して使われる。
正極材・負極材
リチウムイオン電池の電気をためる中心となる材料。正極材と負極材の間をリチウムが行き来する。
電解液
電池の中で、正極と負極の間をイオンが移動するための液体。
スピンオフ
会社の一部の事業を切り出して別の会社にし、株式を株主に分配するなどして独立させること。

出典

  1. 石油化学事業に関する子会社(分割準備会社)設立に関するお知らせ(新しいタブで開きます) 株式会社レゾナック・ホールディングスプレスリリース公開日 2024.07.23
  2. 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)(新しいタブで開きます) クラサスケミカル株式会社有価証券報告書公開日 2026.09.07
  3. 日本ペイントホールディングス(新しいタブで開きます) 日本ペイントホールディングス株式会社公式サイト
  4. Participating in "JOINT3" Consortium to Develop Next-Generation Semiconductor Packaging(新しいタブで開きます) 東京応化工業プレスリリース公開日 2025.09.03